映画がそうして始まった。
けど、このところずっと練習で疲れていた白竜は、静かなシーンになると眠ってしまっていた。そういう私も、思ったより疲れているのか、眠くなってしまった。
「(だ、ダメだよ。折角見たくて来たのに…寝たら、だ…め…)」
頭がぼーっとして来て、限界になった私は、いつの間にか眠ってしまった。
どのくらい眠っていたのか分からないが、映画は恐らく半分を過ぎたのだろう。
「…んっ…しまった…!」
慌てた私は、彼の方を見た。彼の方は、まだ眠っていた。
「(顔が近い…それにしても、白竜って…)」
寝ている姿を見るのも初めてだ。まつ毛は長いし、肌も白いし、それに何か白竜のにおいがする…。私、何だかどんどん変態になっている気がする…。
「(本当、格好良い…)」
想像より寝顔が可愛いと思いながら、私は彼の頬に手で触れた。柔らかく、それでいてハリのある感触だった。
「(や、柔らかい…もちもちしている、もちもちしてるよ…!もちもちもちもち……)」
「…んー…」
「(もちもち もちもち もちもち…)」
彼が目を覚ますかと思い、触れるのをやめた。
「………」
「………」
駄目だ。とても映画を見ていられるような状態じゃない。白竜のことが気になって仕方がない…。
「………」
「(だ、誰も見てない…よね…?)」
自分の席から見える範囲を見渡して、誰もこちらを見ていないことを確認してから、頬にキスをした。
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