04



私はとうこさんに促されて、車の助手席に座った。

「素敵な車ですね〜!」

「そっかな?ありがとう」


とうこさんにぴったりのかっこいい車だった。



外気にさらされていた私の体が少しずつ暖まっていく。




狭い車内に二人きりになると、外の喧騒は遮断され、閑散とした空間に互いの衣擦れの音だけが聞こえた。

まだ自分の置かれている状況を信じられなくて、この高まる胸の鼓動がとうこさんに聞かれてしまうんじゃないかと、内心あせっていた。



「あっ、そうだ…―なまえちゃんさぁ、さっき私を見て、“ティリアン”って言ったよね?」



とうこさんは車を発進させながら言った。




「ひぇっ!き、聞こえてたんですか??」


まさか、聞こえているとは…。とうこさん、もしかして地獄耳?(笑)





「うん♪ばっちりやったょ」



とうこさんは前を見据えながら言った。





「…あははっ―…わ、私、この間初めて見たんです、宝塚!初めて見たのが星組の『エル・アルコン』で」

「へぇ〜、どうだった?」

「すっごぃステキでした!」




車内でのおしゃべりは楽しかった。



とうこさんは、運転しながらも私の話をずっと聞いてくれた。信号が赤に変わると、私の方を見て、一緒に笑い合った。




まるで夢のようだった。


夢なんじゃないかって、何度も自分のももをつねった。

痛かった…―夢―…じゃないんだ………。






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