蘭を咲かせる

解説

この小説は、星組公演エルアルコンのときのショー、
レビューオルキスの一場面から妄想を膨らめた夢小説です(笑)

レビューオルキスの
第4場、オルキス通り、
第5場、クラブ蘭

ラ・ノーチェ(男)A 柚希礼音
ラ・ノーチェ(男) 和涼華
ラ・ノーチェ(男) 彩海早矢

マダム 涼紫央

ラ・ノーチェ(女) 琴まりえ 他

ラゲララ 安蘭けい


貴方はクラブ蘭で働くラ・ノーチェ(女)です。


そして、お相手は彩海早矢さん




夜だから遊びに行こう

イカシてる店探し街に出よう








三人の男は誘われるようにクラブ蘭へ入っていった。




中では色気たっぷりのマダムと、可憐に舞う女たち。


レオンが早々とマダムに近寄っていくのを見ていたハヤは店の壁に寄りかかり、佇んでいる女に目が止まった。




伏し目がちにフロアを見ている彼女に、ハヤは暫く見惚れていた。

陶器のように白い肌、長い睫毛が頬に影を落としていた。




綺麗だ―…

素直に思った。







「お兄さん、一曲どぉ?」


入り口付近に立ったままだったハヤに、女がしなだれかかってきた。


その女がブロンドか、グラマーかと確かめもせずに、手で追い払うと、女は頬を膨らませて去っていった。





そしてまた、先ほどの壁の花を見やると、彼女が顔を上げていた。






彼女と目が合った。






その瞬間、周囲の喧騒が消え、この世界にいるのは彼女と自分の二人だけのような感覚に陥った。









ハヤは髪を撫で付けると、彼女と視線を合わせたまま、近寄っていった。



もう、彼女しか見えなかった。










「こんばんは、俺と踊ってくれないか?」

「……はい…」




返事の声は可愛らしく、少し、震えていた。



彼女は透き通るような白い肌をほんのり朱に染めて、差し出された手をとった。


その恥じらうような初々しさに、ハヤは思わず口角を上げた。



クラブに勤めているのに、珍しい子もいるものだ…。









ダンスをする男女で溢れかえるフロアを二人は滑るように移動していく。



彼女は初めこそ俯き加減にしていたが、ダンスが始まれば時折、目を合わせてくれるようになった。







「――…名前は…?」

「え…?」

「名前だよ、君の」

「……##NAME1##です…」





微笑んだ彼女に身体が熱くなったのは、ダンスをしているからではなかった。










暫く、ハヤは##NAME1##の瞳を情熱的に見ていた。




二人が入り口に近づいたとき、一人の男が入ってきた。



男―…ラゲララは何かを探すように店内を見渡すと、近寄って、手を差し伸べた女の誘いを断って、店内を歩きだした。






ハヤは、##NAME1##がそんなラゲララをじっと見ていることに気が付いた。





「…何を考えてるんだ?」

「あ、いえ、あのお客様が、何かを探しているようなので…」





ハヤは##NAME1##の瞳が自分を映していないことに少しイラついた。





「どうせ、好みの女でも探してるんだろ………それより…」








ハヤは##NAME1##を自分に引き寄せた。

そして、バランスを崩して自然とハヤに密着した##NAME1##の耳元に唇を寄せた。






「今は俺だけ見てくれ…」




その言葉に弾かれたように顔を上げた##NAME1##は、ハヤと目が合うと顔を真っ赤にした。










その時…



「……っ…ぃやっ!!何するのっ!!?」




悲鳴のような拒絶の言葉に目を向けると、どうやらカズが一悶着起こしているようだった。




「…コトっ!?」








ハヤ達が近寄っていくと、カズから解放されたコトと呼ばれた女が##NAME1##のてころにやってきた。





「コト、大丈夫?」

「…う、ん…」





「困るわ、うちの子に手を出されちゃ、うちはそうゆう店じゃないのよ」

「カズ、そこら辺でやめとけ」

「うっせぇっ」



騒ぎを聞き付けて、マダムとレオンが止めに入れば、カズはレオンの手を振り払った。




すると、様子を見ていたラゲララが後ろからカズの腕を掴んだ。



その腕も振り払ったカズは、他人かつ部外者のラゲララの行動に、ついにキレてしまったようだった。



困惑したようなラゲララに、射ぬくような視線を投げ付けるカズ。



睨み合う二人は、ジャケットを脱ぎ、今にもケンカを始めそうだった。






「…ここでは店に迷惑がかかる」

「…っち!!表でろっ!」




そして、二人は店を出ていってしまった。







「やだ……マダム、いいんですか?」


「店の外でやる分には、構わないわ……さぁ、みなさん、お気になさらず!」




けろっとしたマダムに言われて、またダンスが始まった。







##NAME1##はまだ心配そうに、二人が消えた入り口を見ていた。



「…ほおっとけばいいよ、すぐに終わるさ…」

「でも……」

「いいから…」




自分以外を心配し、考えている##NAME1##を見ると、ハヤの中に独占欲が生まれた。

嫉妬をするなんて、子供のようだが、それだけ、ハヤは合ったばかりの彼女に惹かれていた。


##NAME1##の腰を抱き寄せると、##NAME1##は少し困ったように微笑んだ。



その赤く熟した果実のような唇を食べてしまいたいと思ってしまう。


もう彼女から抜け出せないらしい。











「…ちっ!胸クソ悪りぃなっ!!」



バァンっ!と言う音を立てて入ってきたのは、カズだった。

どうやら、彼が勝ったらしい。






「オイッ、レオン、ハヤ、帰ろぉぜっ!」



カズが言うと、レオンはおとなしくそれに従った。

これ以上、この店に迷惑を掛けないためだ。



レオンはマダムに謝罪をすると、ハヤ達のもとにやってきた。





「…帰るぞ?」


「…あぁ……」






ハヤはレオンにそう告げると、##NAME1##に向き直った。


別れには早すぎる時間だった。




「##NAME1##……、もっと君と一緒にいたかった…」

「……はい…」





ハヤは##NAME1##の手をとると、キスを一つ落とした。




「……っ!!」


「……じゃあ…」






名残惜しそうに手を放したハヤは、レオンの後についていった。










入り口付近には、すでにカズが立っていて、二人をまっていた。



マダムが近寄り、レオンを見送っているとき、カズがその横を通りすぎ、店内を横切った。





「……?カズ??」





ハヤが声をかけても、カズは進み続け、ついには##NAME1##と一緒にいるコトの前で立ち止まった。











「…………悪かった…」







そう言うと、すぐに踵を返したカズの背中に、コトは釘付けになった。









先に店を出ていったカズを見ていたハヤは、また##NAME1##に振り返った。







「(またな)」






声に出さずに言ったそれは、しっかりと##NAME1##の心に刻まれた。





彼が帰ってしまう淋しさに戸惑っていた##NAME1##の胸はじんわりと熱を持った。










三人の男は夜の街に消えていった。





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