原沖家族部屋 | ナノ





はじめくんと!

『そ』

描かれた“文字”は非常に難解なものだった。
そうであると分かっている斎藤だからこそ“文字”であると認識出来る、そんな形。

多分、おそらく――

藤堂や永倉が見たならば、
「このぎざぎざ模様は一体なんだ」と無神経なことを言って、愛らしいそーじの瞳に涙を浮かばせるに違いない。


『う』

己の勝手な想像の中の藤堂・永倉に、斎藤が勝手に腹をたてている間にも、目の前に描かれる2つめの“文字”

それを見て斎藤は、うん、と深く頷いた。


『じ』

一所懸命になり過ぎたのだろう。
息をする事すら忘れていたらしいそーじは、最後の1つを書いた瞬間、ぷはぁっと大きく息を吐き出した。

その“文字”の1つ1つを確認するように『そ、う、じ』と声に出し……一寸間をおいてから、嬉しそうな笑顔を浮かべて。

完成した紙を持ち上げたそーじは、上気した頬ときらきらとした瞳で斎藤を見上げた。


「はいめくん!かけたぁ!」
「あぁ、完璧だ。そーじは天才だな」

それは嘘偽りなく、本心からの言葉。

斎藤からしてみれば、筆の軸ほどしかない小さくて細い指が、正しい筆の持ち方も出来ぬほどの小さな手が、一度形を教えただけの文字を描いていく様は、まるで奇跡のようで……。
決して大袈裟に…ではなく、心からの賛辞を贈ったのだった。



例えその文字が、そーじと斎藤以外の人物から、どう見られようと―――…

「お!斎藤、ここにいたのか」

運悪く、というべきか。
噂をすれば、なんとやら。

現れたのは永倉と藤堂だった。

「休んでるとこ悪いんだが、土方さんが捜してたみてぇだからよ――…って、そーじも一緒か。……ん?なんだこりゃ、蚯蚓でも練習してんのか?」
「……みみじゅ」


何故、そーじが蚯蚓の絵など必死に練習すると思ったのか!


頭を抱える斎藤を横目に、
永倉の言葉で明らかに肩をおとしたそーじを見た藤堂が慌てた。

「みみぅじゃなくてしょーじだもん」
「違ぇって、しんぱっつぁん!第一蚯蚓なんか描いて楽しいわけねぇだろ!……これはアレだよ、あの、蛇…とか。あっ…!龍!そうだ、龍だって。来年辰年じゃん!そーじ、練習してたんだよな♪」
「昇り竜ってか!小せぇのに粋なもん知ってんじゃねぇか!」
「ちなうもんぅ。しょーじなの!」

「しょーじ…って、総司、だよな?」
「に、似顔絵??とか……」

総司の顔。それにしちゃあ奇怪な――

「ふぇ…っ…しょーじだも…っ」

「―――二人とも…覚悟は出来ているのだろうな」

困り果て顔を見合わせた永倉と藤堂が、近くで放たれた余りにも強すぎる殺気に凍りついたのは、ほぼ同時のこと。




二人がどうなったかは斎藤さんのみが知っています←





オマケの【さのさんと!】

「じゃ〜ん!」
「………(やべぇ…こりゃ一体、何の絵だ?)」
「はいめくんがおしえてくえたぁ!」
「――そーじが描いたのか?」
「ん!ひとりでかいた!」
「そっか、偉いな!……でも」
「???」
「折角そーじが上手に描けたってんだから、描いてるとこを見てぇんだけどな。駄目か?」
「いいよ!しゃのしゃんにもかいてあげうね!」
「よし!じゃあ、ここ(膝)くるか?」
「くるぅ!」


「そんじゃあ、まず何から描くんだ?」
「まずはぁ!しょーじの『しょ』からね!」
「……総司の――…」
「そ〜〜!」
「(……だからこんなぐにゃぐにゃしてんのか/笑)」
「うぅ〜」
「“う”は、もっとしっかり点の部分を分けねぇと、“ろ”になっちまうからな」
「ろ?」
「一緒に書いてみるか。こっちが、う。」
「こっちが、う!」
「で、これが“ろ”――だ」
「しょっくり!!」
「だろ?間違えねぇようにしないとな?」
「おぼえた!!」


「じゃあ最後は――?」
「んっと…こえでね……」
「そ う じ、の完成だな」
「はいめくんがおしえてくえたんだよ!」
「じゃあ後で俺からも礼を言っとかねぇとな」


扱いには大分慣れてきた頃www









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