小説 | ナノ





君との夏

「なぁ、総司!!プール行こうぜ!!」

***

藤堂の一言で沖田たちは近くのプールに来ていた。




「なぁ…」
「いやー!!やっぱ夏は泳がねぇとな!!」
「うむ。涼をとるにも最適だな。」
「プールかぁ。そういやここ最近来てなかったが、海とはまた違って楽しいよな。」
「なぁ!!!!」
「ん?どうしたよ、平助?」
「何でみんな居るんだよ!!?」

そう、永倉・斉藤・原田とともに。

(俺は総司と二人で来たかったの!!)
(はん!!平助、ぬけがけはご法度だぜぇ。)

端でコソコソ話をする藤堂や永倉を横目に、原田が沖田の傍に駆け寄る。

「総司、平助たちはまだ知らねぇのか?」
「だって…言う機会なかったんですもん。」
「まぁ、俺も新八にも言えてねぇしな…」

沖田と原田は恋人同士。
その事実を他の者は知らない。


原田はずっと沖田に思いを寄せていた。
だが、みんなの気持ちを知っていたために自分からは告白できずにいたところ、沖田から想いを伝えてくれて今に至っている。

しかし、沖田本人は周りからの気持ちにはまったく気付いていないから困ったものだ。

(いつかは言わなきゃなんねぇんだが…)

原田は頭を悩ませていた。

***


「ちょ!!//総司!!やばいって、その恰好!!」
「は?何言ってんの平助?ただ水着なだけなんだけど?」
「う…む…。これは少々刺激が強いやもしれぬ。」
「一君まで!?何?みんな僕に泳ぐなって言ってるの!?」
「いや、総司。これは俺たちの問題だ。少し時間をくれ。」
「??意味わかんないんだけど…」

ほら、こいつらみんな顔を真っ赤にさせて総司を見てやがる。

太陽に照らされた総司の上半身は程よく筋肉がつき、肌は透き通るように白い。
そりゃぁ見惚れるのもわかる…し、第一俺も総司から目が離せない。

だが、恋人がそんなに周りから熱い視線で見られるというのは決して気分の良いものではないわけで。

大人げないとは分かっていながら、思わず表情も曇ってしまう。

そんな俺に気付いたのか、総司が駆け寄ってくる。

「左之さん、眉間に皺が寄ってますよ?どうしたんです?」

上目づかいでそう尋ねられれば思わず心臓が飛び跳ねる。

「折角の男前が台無しじゃないですか。」

そう言って、俺の眉間に触れる。

形の良い唇を尖らせながらそんなことをされれば、思わず顔も綻んでくる。
さっきの小さな嫉妬など、どうでもよくなってきた。

「いや、なんでもねぇよ。気にすんな。」
「ほんとですか?」
「あぁ。」

お互いに顔を見合わせて笑う。

そこに…

「総司―!!俺も眉間が皺だらけだぜぇ。」

明らかに変顔の新八が割って入る。
本人は至って真面目なんだろうが…

「何してんですか、新八さん。」

総司は明らかに冷ややかな目で新八を見遣る。

まぁ、こうなるわな…。


***

しばらくみんなで泳いだり、滑り台で滑ったり。
僕たちはプールを満喫していた。

その間も僕は終始左之さんに見惚れてしまっていた。

左之さんはいっつも格好いいけど、今日は水着だからか、さらに格好よく見える。
顔が赤くなるのを抑えるのに必死だ。

休憩をとることになって、荷物を置いている場所へ移動する。

「じゃぁ俺、飲みもん買ってくるわ。」

左之さんの逞しい背中を見送る。
後姿も…格好いいなぁ…


「総司。」

呼ばれて振り返ると一君が濡れたタオルを持っていた。

「顔が赤いぞ。これで冷やすといい。」
「あ、ありがとう。」

すっと差し出されたタオルを受け取る。
この赤みは左之さんに対するものだとは言えず、素直にほっぺを冷やした。

僕、そんなに赤くなってたんだ…

大人しく冷やしていると、平助がビーチボールを膨らませながら話しかける。

「総司!!休憩終わったらバレーしようぜ!!」
「うん、いいよ。」

他愛もない話をしながら左之さんを待つ。
しかし、しばらく経っても帰ってこなかった。

「おっせぇなぁ、左之。」
「うむ。どうしたのだろうか。」
「…僕、ちょっと見てくるね!!」
「あ、総司!!」

売店まで足早に歩く。
その途中…

え…??

楽しそうに女の子達と話す左之さんを見てしまった。


「せんせー。一緒に泳ごうよー。」
「だーかーら、俺は連れ待たしてっから行かなきゃいけねえんだよ。」
「「えー!!」」

あれは確かクラスの女の子。
やたらと左之さんにボディータッチをしている。

なんで、左之さんそんな子に触らせるの?
やめてよ…
触らないでよ…


もやもやした気持ちのまま、重い足取りでみんなの所に戻る。

「あ、総司。左之さん居た?」

ふと平助のほうを見ると、すでに膨らんだビーチボールを手にしていた。

「ねぇ、平助。それ、貸してくれない?」
「へ?これ?いいけど…」

僕は平助から奪うようにそれを受け取ると、再び売店を目指した。

左之さんは相変わらず、女の子に囲まれている。

そこを目掛けて思いっきりボールを投げる。

ボコッ!!

「〜っつぅ…」

左之さんの後頭部に見事直撃。
目に涙を溜めながら左之さんが振り返る。

「そ…総司…」
「あ、原田先生、すみません。ボールが当たっちゃったみたいですね。大丈夫ですか?」

あくまで笑顔で尋ねると、左之さんの顔が青ざめていく。


「ちょっ…総…」
「あー!!沖田君じゃない!!せんせー、沖田君と来てたの??」
「いや、僕だけじゃなくって剣道仲間と一緒にね。」
「そうなんだぁ。」

女の子と少し会話を交わして、僕はボールを拾い上げた。

「じゃぁ、僕は先に戻ってますね。ごゆっくり、原田先生。」

踵を返して戻ろうとする。



「ちょ…!!待てよ総司!!」

左之さんが追いかけてくるけど、知らんぷりをする。

後ろから腕をつかまれた。

「総司、お前何勘違いして…」
「…左之さん、どうせ女の子といるほうが楽しいんでしょ?」
「だから、誤解だって…」
「僕は男ですもんね。男同士より、やっぱり女の子といるほうが」
「総司!!」

左之さんの苛立ったような声に思わず体が強張る。

ゆっくりと顔を上げると、眉尻を下げた左之さんと目が合う。

「総司…。俺が想ってるのは、お前だけだ。」
「…」
「どんだけ世間が騒ぐような女が目の前に現れたとしても、そいつに気持ちが動くようなことは、絶対にねえ。」

優しく、諭すように僕に語りかける左之さん。

少しずつ、僕の肩の力が抜けていく。

「わかったか、総司?」
「…うん」
「はは、やけに素直じゃねえか。まぁ、俺もお前らを待たせちまって、悪かったな。それに…」
「?」
「男だ女だ、関係ねぇよ。俺はお前を好きになったんだ。」



そう言って、僕の頭にポンッと手を乗せる。

心地よい左之さんの手の温かみを感じながら、僕の不安は少しずつ溶けていった。


***

「ねぇ、左之さん。」
「んー?なんだ、総司。」

二人で水に浸かりながら言葉を交わす。

「みんな、どうしちゃったんですかね?」

そう言って、総司は荷物置き場で体育座りをしている三人を見遣る。

実は、さっきの俺と総司のやり取りを、あいつらは物陰から覗いていたらしく…
俺と総司の関係は、みんなにばれちまった。

それで、あいつらはあんな状態で落ち込んじまってるわけで。

まぁ、こんなこと言うのはあれだが…
結果オーライってやつ…かな。

俺はあいつらの気持ちを察しながら、苦笑いを浮かべた。


しばらく二人して泳いでいると、総司がスッと近寄ってきた。

「これからは、みんなの前でも気兼ねなく、左之さんと居られるんですね。」

ニッコリとほほ笑んで俺を見上げる総司。

「僕、すごく嬉しいです。」

思わず顔が熱くなっていくのを感じる。

あぁ、こいつは相当惹かれちまってるな。

そう、ぼんやりと思う。
今すぐにでも抱きしめてやりてぇが、ここは公衆の面前だしな。

そのとき、俺の頭に妙案が浮かぶ。



俺はニヤリと笑って、総司に囁く。

「総司。今から、どっちが長く潜ってられるか、競争だ。」

総司は目をパチパチさせると、口角をあげ頷き、了解の意を示す。


「「せーの!!」」

二人して一斉に潜る。

そこは何も聞こえない、俺たちのほかには誰もいない世界。

総司と俺だけの空間だった。



目を開け、お互いに顔を見合わせる。

口をパクパクと動かすと、それを読み取った総司の口から、わずかに息が漏れる。
そして、伏し目がちに、返事を返してくれた。

そして、総司の肩を引き寄せ、口付ける。

ふたりの間を埋め尽くすように、深く。




(愛してる)
(僕もです)


***

「ふっ…」

本日何度目かわからない笑みが零れる。
昨日の総司の可愛い嫉妬や水の中での出来事を思い出し、仕事中にもかかわらずに顔が緩む。

その時、愛しい者からメールが届いた。

『仕事、お疲れ様です。今日、左之さんの部屋で、ご飯作って待ってますから。』

絵文字などはないけれど、あいつらしいメール。
そこに込められた何気ない労いの言葉に再び顔が緩みかけたとき…


「なーに仕事中にいちゃこらしてんだ、左之!!」

後ろから新八に携帯を奪われる。

「な!!新八!!携帯返せよ!!」
「誰が返すかよ!!畜生!!総司を独り占めしやがって!!この総司ったらしが!!」
「意味わかんねぇよ!!」

ふたりでギャーギャー騒いでいると、後ろから肩をポンと叩かれる。

振り返るとそこには、今までに見たどんなものよりも恐ろしい顔の…
土方さんが…

「原田…。その話、詳しく聞かせて貰おうじゃねぇか…」

肩がギリギリと悲鳴を上げる。


この日、俺がボロボロで家に帰ったのは言うまでもない。



===


小町サマより相互記念!!
終始によによさせて頂いちゃいました♪左之さん相手だと沖田さんの子供っぽさが強調されると言うか、乙女度あがるというか。可愛くなっちゃうの仕様ですよねっ>w<可愛い沖田さん大好物です♪みんなに愛されちゃってればいい(・∀・)と真剣に思っています。
小町様、どうもありがとうございました^^これからも宜しくお願い致しますm(_ _)m



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