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態度じゃなくて言葉で表せ

一体、僕の何が不満?
[沖田side]

左之さん好みの――でも、僕にはちょっと強過ぎる――そんなお酒を用意して。

夜更けに一人、足音を忍ばせ部屋を訪ねる。

「飲みませんか?」と
誘う笑顔は気分次第。

本当に誘いたいのがお酒じゃない時もあるし、溜まった鬱憤を吐き出して愚痴りたいだけの時なんかもある。後者は稀に、のことだけど(言葉にせずとも僕の意を汲みとってくれるから、左之さんは楽だ)

さて、今日の気分はと言うと。



酒は飲んでものまれるな。
自分の杯は、話で誤魔化しながら控えめに。
左之さんには多少酔ってもらわないと。
理性がふっとんじゃうくらい、でも前後不覚にはならない程度が理想的。なんだか滅茶苦茶にされたい気分だから―――

隣に寄りそって――体温が感じられるくらいの位置でお酌をする。
左之さんも僕の気分をわかってか、幾分早めに盃を傾けて…くれている、のに

(だけど今日は何かが変だ。)

胡座をかいてる左之さんの、膝や太腿を指先でなぞっても
―――僕の肩を抱きながら平然とお酒を口に運んで。

指をからめ取りながら、肩口へ頭を預けてみても
―――頭を撫でてくれるだけ。

少し自棄になりながら、注がれた酒を一気に飲み干し―――「身体が火照ってきたから」と、上着を一枚脱ぎ捨てる。

それから左之さんの着物の裾を軽く引いて強請れば、ようやく近付いてきた唇が、酒で赤く染まっているであろう鼻のてっぺんに降ってきた。

望んでいるのはそんなのじゃない。

馬鹿みたいに遊女の真似事までしてるのに、僕だけがてんで空回り。


もしかして左之さんは、今日は気分じゃないんだろうか。
そんな不安が頭を過る。
だとしたら、今の自分は大分滑稽だ。

でも、本当にそうだったとしたら……部屋を訪ねた瞬間に、やんわりと追い返してくれている筈だ。意味もなく、こんな態度を取る人じゃないことは知っている。

(だけど……なら、どうして?)

思い当たる理由が見つからない。

とうとう痺れをきらした僕は――もしかしたら初めてかもしれない――直接的な言葉を、左之さんに投げかけた。

「どうして、手ぇ出さないんですか?」

「出して欲しいのか?」

思いもよらない返答に言葉を失う。

その為に来ているって知ってるはずなのに。どうしてそんな聞き方をするのかが分からない。

こんな風に面倒くさい真似はしたくないのに。どうしてそんな聞き方をするんですか。

お酒を飲んで。
身体を重ねて。
熱を吐き出して。
おやすみなさい。

僕はただ、いつもみたいに、簡潔でわかりやすい時間を求めているだけなのに。


――てを だして ほしいのか


頷けばすぐに、その時間が手に入る。
けれど、その言葉を了とするのには、抵抗があった。

それじゃまるで、僕だけが関係を望んでいるかのような言い草じゃないか。

「……別に――――そういうわけじゃないけど」


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