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青春真っ盛り(平沖平)

中学生平助クン と 高校生な総司
…ってくらいの設定しかありませんw



『理由をはっきり言ってくんなきゃ諦めらんない!』
必死な顔でそんな事を言う彼に、なんて答えるのが、正解?


***** *****


平助クンは同じマンションに住む中学生の男の子だ。
学校に出る時間や、通学の方向が一緒なせいか、いつのまにか自然と懐かれた。

素直でまっすぐな性格、いつも明るくって太陽みたいな笑顔が眩しい。ちょっと単純でドジなところが可愛い彼は、僕にとっては“弟”みたいな存在だった。

だからまさか、そんな平助クンから「愛の告白」ってやつを受けるハメになるなんて、考えたこともなかったわけで―――


***** *****


『新しいゲーム買ったんだ。総司遊びに来てよ!』
そんな招待を受けたのは、暇を持て余していた日曜の午後。メールの着信とともに、わざわざ家までお出迎えにあがられたんじゃ僕だって無下にできやしない(可愛い弟分からのお誘いだしね)

まずは食糧でも調達に、と二人で近くの商店街へ出る。
テキトーにお菓子を買って、ジュースを買って――
欲しい漫画があるからと言う平助クンに付き合って本屋に寄る。CDを見たり服を見たり、なんだかんだ騒ぎながらブラブラしていたら、いつの間にか結構な時間が過ぎてしまっていた。

学校での友達付き合いとか、そう言うのは面倒だと思うけど、平助クンと過ごす時間は嫌いじゃない。人に合わせるのが大嫌いな僕が、こんなコトを思うのは自分でも不思議で。だから、「よっぽど彼の事が気に入ってるんだろう」って自覚はあった。――自覚はそりゃあ、あったけど。

それはあくまで後輩として。
かわいい弟として…な訳で。


帰り道、突然「神社に寄って行きたい…!」なんてお願いをしてきた平助クンを、ちょっとだけ疑問に思いながら付いてきた境内で、まさかの「愛の告白」を受け―――冒頭に至る、わけである。


「やっぱり、男だから、ダメ?総司も、気持ち悪い……よな」
「別に、気持ち悪い、とかじゃないけど」
「じゃあなんで?なにがダメ?!」
「何が…って、んー?う〜〜ん……」

具体的に何、と聞かれると、難しい。

これが知らない女の子からの告白だったら、いつも軽くあしらって終わりなんだけど、捨てられた子犬みたいな目で必死に見上げてくる平助クンを、傷つけたくはない自分もいて。(ああ、困った!)

「ぇ〜と、――僕より強い人が、いいかも?」
「そんなんだったら俺頑張るし!」

ですよね。

「背も高い方が、いいなあ、なんて」
「これから伸びるかもしんねぇじゃん!ってか、まだ伸びてるし!」

「真面目で落ち着いた人って好きかも。」
「う゛っ……!ま、真面目になるし!努力するし!!」

「頭もいいとカッコいいよね」
「だから努力するってば!!」

「――年上の恋人が欲しいかも」
「〜〜〜っ!そんなのズルい、どうしようもないじゃん!」

必死に食い下がってくる姿を「可愛いな」と思うものの、やっぱりコレは恋愛感情ではない。
全然ないハズなんだけど、僕が断った後、平助クンが他の子を好きになって――って考えると、何処かがもやもやするのはどうしてなんだろう?
だからはっきり断れない。

「俺、たくさん頑張るからさ!可能性ならあるってコトだよな?!総司は、好きなヤツいないんだろっ?」

「いないけど、平助クンを好きにならないかもしれないよ?」
「いいよそれでも!まだ可能性があるなら、俺、頑張れるからさ!」

平助クンはキラキラした目で、いつもみたいに太陽みたいな笑顔を見せた。さっきの泣きそうな姿も可愛かったけど、笑っていた方が好きだな、と思う。それはやっぱり、恋愛感情ではないんだけれど。

(そのうち平助クンも、「間違った青春の1ページ刻んじゃったな」って…気付く日がくるよね)
そう考えると、何処かがつきりと痛んだ。


***** *****


「総司っ、そうじ!!今帰り?」

いつも通りの生活に戻ってしばらくたったある日。
学校帰りに商店街を通り抜けていると、馴染みの声が追いかけてきた。振り返れば、声の主が人ごみをかき分けて走ってくるのが見える。

「平助クンも?おかえり。」
「へへっ、ただいま!なぁ、コレ見てくれよ!」

じゃ〜ん、と言って平助クンがカバンから取り出したのは、80点と書かれた数学のプリントだった。

「ま、まだまだかもだけどさ…!この前は数学60点くらいだったんだから!俺にしちゃすっげー頑張ったんだぜ!」
「………」
「総司が頭いいやつカッコいいとか言うから!あ!それに最近は牛乳も毎日飲んでるし、背だってすぐ追いついちゃうんだからな!」
「………あ…。」

アレのことか!と気付いたのは、隣の平助クンが『腕立てを始めたこと』や、『炭酸をやめて野菜ジュースにしてみたこと』とかを熱く語っている最中だった。
(なんなの その 可愛い努力…!)
なんて笑うコトも出来なくて、恥ずかしさと照れくささで頬に熱があつまってくるのを感じる。一体全体このクラクラはなんだろう?


「あ、それとさ。神社に寄って行きたい!」

「え、な、なんでっ……また?」
「せっかくだから、この際 願掛けもしとこうかと思ってさ!」



『総司と恋人同士になれますように!』


そんな願掛けなんて、もうしなくとも!


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