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1年、2年、そして3年目のハロウィン

ハロウィン/SSL/原沖


1.

「トリック オア トリート?」
――だなんて、
流行にのっかって言ってみた。

「なんだそりゃ」と、
原田先生は笑って肩をすくめた。
それからちょっと、考える素振り。

ポケットと机とカバンの中を漁りに漁って、ようやく発掘されたらしい1枚のガムは、僕の苦手なから〜いやつ。

これだって立派な菓子の1つだろ。
スースーするのはいらないよ。
選り好みすんのは良くないな。
でもスースーするのは嫌いなの。

そんなやり取りをした昼休み。

文句を言っているうちに、いつの間にか口の中に放り込まれていたそれ。「午後の授業前の眠気覚ましになっただろ」――ニヤリと笑った先生に背を押され、教室に戻る涙目の僕。



なんとも からい 思い出だ。




2.

「トリック オア トリート?」
――だなんて、
懲りずにふたたび言ってみた。

からいお菓子はもうこりごり、それでも僕の苦手なお菓子をくれるようなら“トリック”コースを味わってもらおう。幸いなことに、午後には左之先生の授業がある。

もしも、の仕込みは完璧だった。


けれど、僕の準備は不発に終わる。

「ハッピーハロウィン」
――なんて、言葉と共に
目の前に現れたお菓子たち。

大好きなお店のチョコレートにクッキー。限定仕様のパッケージは、オレンジ黄色、黒に紫。これぞ、まさしくハロウィンってやつ。

両手いっぱいにお菓子を抱えて固まっているうちに、口の中に放り込まれたのは甘いキャンディー。「まだ足りないのか?」――耳元で囁かれた言葉に顔を上げた。至近距離に見える先生の姿、瞳の中にうつる僕。



キャンディーよりも 甘い口づけ。




3.

「トリック オア トリート?」
――お馴染みの台詞も3回目。
調子に乗って言ってみた、けれど

「―――あれ…?」

食後のデザートに甘いお菓子を食べようと、期待を胸に左之さんの所へ足を運んだものの――昼休み、部屋の主はあいにくの不在。

わざわざ買ったペットボトルの紅茶が無駄になったのは残念だったけど。気を取り直して再度トライした放課後のこと。


『ハッピーハロウィン』
――期待していた返答と
お菓子の山たちは、現れなかった。

代わりに沈黙の時間だけが過ぎていく。

(もしかして、気分でも悪いとか……?)

そんな不安に襲われて、椅子に座ったまま動かない左之さんの方へ近づいた――瞬間、腕をつかまれて勢いよく引っ張られ―――バランスを崩した僕は、そのまま左之さんの太腿を跨いで座る体勢になる。

そのまま、背中に腕をまわされ
きついくらいに抱き締められて。

「菓子がないから、悪戯…でいいぜ?」
「………へっ?」
「悪戯してくれるんだろ?ほら――」
「ほら……って、」

お菓子を貰えると思い込んでしまっていた僕は、去年のように“悪戯”の用意をしていない。しかも腕の中に抱き込まれ、すっかり身動きの取れないこの状態じゃ、どうしようもなくて。
望まれているコトは分かっても、実行してしまうのは何とも癪だ―――

「んじゃあ、そうだな」

そんな風に迷っているうちに、先に口を開いたのは左之さんだった。

「トリック オア トリート?」
「――え…」

吐息の温かさまで伝わる距離。
浮かんだ笑みは、意味深で、妖艶な……

「菓子がないなら、イタズラしてもいいんだろ?」

啄ばまれる唇。
僕の背中を踊るように滑る長い指。





これってさ、
“僕”がお菓子ってことにならない?


菓子?甘いってのは確かだが、
俺ん中じゃあメインディッシュだな。


ふぅん…それなら仕方ない か。



二人でイタズラを仕掛けあいましょう



人にはちょっと言えそうにない、
3年目のハロウィン が 幕を開ける。


ゴミ箱よりリサイクル。
ちょい加筆修正、修正になったかは謎…ですけど。沖田さんの「呼び方3段活用(笑)」が書きたかっただけなんです。気付いてもらえてたら嬉しい、ですww



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