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夏の終わりの一日に、あなたと遠くの海へきた。

夏の拍手2/現代/原沖



ガタンゴトンと響く音。
乗っている人はまばらで、ゆったりとした空気の中を進む電車に――沖田と原田は二人、肩を並べて座っていた。

夏の終わりの夕暮れ時、
地平線の彼方へ沈む夕日を見つめる。

ガタンゴトンと響く音。
時折聞こえてくるのは、隣りの車両からの笑い声――都会の喧騒から離れ田舎へ遊びにきた観光客のものか、それとも地元の学生達でも乗っているのか。
それは決して不快な声ではなく、むしろ今日一日の楽しい時間を甦らせてくれるかのような優しい音で二人に届いた。

自分も楽しかったのだ、と。

ふと伝えたくなった沖田が、横へ顔を向けたのとほぼ同時に、原田が振り向いた。
あまりのタイミングの良さに驚いた二人で、口を開けたまま固まること数秒――それから、声に出さずとも重なった想いに笑いあい、また窓の向こうの沈む夕日に視線を戻す。


再びおとずれる、穏やかな時間。


揺れに身をまかせているうちに――その心地良さと、1日外ではしゃいだ疲れもあるのだろう――沖田が瞼をこすり、眠気と格闘し始めた。舟をこぎそうになっては、しきりに首を振る姿があまりにも愛らしく、『寝てもいいんだぞ』と助け舟を出し損ねた原田は、暫しその様子を見つめることにした。

「――お前って、本当……可愛いよな」

そうしているうちに、思わず出た本心。

何を言われたか直ぐには理解出来なかったらしい沖田は、きょとんとしながら首を傾げ、そして徐々に理解した内容に、夕日に照らされ紅く染まった頬を更に真っ赤に染めていく。

「か、可愛いとか……!左之さんくらいですよ、そんな変なこと言うの」
「みんな思ってても口にしないだけだろ」
「男に可愛いとか褒め言葉じゃないし。第一僕のどこ……ひゃっ」

照れからか妙に饒舌になった紅い頬を、原田が軽くつねった。

「こういう反応とか、全部だろ」

見た目よりもずっと柔らかな頬の感触を、何度か指先で揉んで楽しんでから、頬にかかっている髪の毛を耳にかけてやるように手を滑らせて――…
くすぐったそうに肩を竦めた沖田の頭を撫で、原田はそのまま自らの肩口へ凭れ掛かるよう導いた。

「まだ暫くかかるからな、眠っとけ」
「う……もしかして、見てた?」
「あんまり可愛いから、声かけ損ねちまってな」
「またそういう…変なこと言う……」
「惚れてる相手に見惚れちまうのは、変なことじゃねぇだろ」
「……………もう、」

左之さんて本当タラシだよね。

悪態を吐きながらも、やはり完全に覚醒しきっていなかった沖田は、枕が出来たことで再び訪れた睡魔に誘惑され、すぐにウトウトとし始める。
その様子を愛しそうに見つめた原田は、念のためと人のまばらな車内を軽く確認したあとで、『おやすみ』と髪に口付けを落とした。



「僕の方がしょっちゅう、見惚れてます―……」


夢の世界へ旅立つ直前呟かれた言葉は、天の邪鬼な恋人の見せた本心で。

「総司……」

そんなたった一言が、夏の暑さよりも何よりも、強烈な熱として胸に残った、夏の終わり。





『秋が始まったそん時にゃ、
 お前を連れてどこへ行こうか。』



車デートもいいけど、電車デートさせたいな〜って思っただけの文でした(=w=)電車っておいしいですよね。沖田さんは隅っことか壁際・ドアの横とかに寄りかかって立ってそう。左之さんは相手を人ごみから庇うように、さりげなく(と言うかむしろ無意識に)腕でブロックしちゃう人ですよね。むふ♪……電車から差し込む夕日が好きです、って妄想。それだけ!>w<←


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