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線香花火

夏の拍手1/幕末/原沖
時代無視アイテム御免なさい
…と、先行入力で土下座しておきます!





「線香花火って、好きだな」

沖田は、手の内にある燃え尽きた花火を見て笑みを浮かべた。

一寸前まで咲いていた、弾ける花弁。

夜の闇にうかぶ小さな灯りが、消える一瞬。
その潔さに憧れすら覚えるのだと、彼は言う。

「潔い……か」
「うん。椿、にも似てるね」


ぱっと散りゆく、潔さ…かな。


言って微笑む横顔があまりにも儚げで――
原田は、夏だと言うのに足元から冷えていく心地がした。



線香花火のように、
 などと言うのなら。



「俺も好きだが、一寸見解が違うみてぇだな」
「?」

原田は、手にした花火に火を灯しながら笑顔を見せた。

「潔いのは認めるが、俺が好きなのは粘り強さってえか」
「…………」
「か細い柳になってからだって、結構足掻きやがるしな?最後まで輝こうとしてるからこその、魅力だろ」
「――足掻いて…?」


かすかに弾ける花火の音に溶けこんでしまうほどに小さく呟いた沖田は、原田の手にある其れを見つめた。




ぱちぱちと
燃え尽きた花火が二人の足元に消え、静寂に包まれる。





先に沈黙を破ったのは沖田だった。


「確かに、そうなのかも」


聞こえた声の明るさに安堵しつつ、原田はゆっくりと顔を上げた。


互いに顔を見合わせる――


微笑む沖田の表情は、先程見せた儚げなものではない。


「左之さんの持ってる花火見てたら…」
「ああ」
「最後、思わず頑張れーって。応援したくなっちゃいました」
「ははっ、なかなか根性あっただろ?」
「うん。……だからこその、か」


果てる潔さに魅せられる のではなく、
足掻いて手をのばしてしがみついて、全てを燃やし尽くそうとする――儚くも、強い――その息吹。


「やっぱり僕、線香花火、好きですよ」
「……だな。俺もだ」





気付けば、残り一本になっていた線香花火。


「少しでも永く、出来るといいんだけど」


言いながらそっと火を灯した沖田の手に、背後から抱きしめるようにして原田はそっと手を重ね、きつく握り締めた。


「なんだか、夏の終わり…って感じがしますね」
「来年もまた一緒にやろうな」
「こんな風に?」
「そう、こんな風に」





いつ散るとも知れない身だけれど

この命尽きるまで、
貴方の傍で華麗に輝いてみたい と願った




或る夏の夜の物語、でした。

時期を書いてないのはあえて…です。病気発覚後と前で糖度も全然違っちゃうと思ったので……雰囲気文ぽいの好きなのかな;そのクセ中々うまく伝えられないのがもどかしい><


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