ラビ×リナリー



そもそも、自分自信がエクソシストになったのさえたまたまだというのに。
どうしてこう、君はこんなにも俺を悩ませるんだろうか。思考回路はとっくの昔にショートしていて、頭の中が真っ白なのに。


静かな昼下がり。久しぶりに任務もなく、自室付近にある図書室に足を運んでいた。案の定人は居ない。ドアを開けて一息。古びた紙と歴史の臭いが鼻をつく。

それほど広くも無いあたり、図書室とは名ばかり。どうせ使わなくなった無駄な資料をつめこんだだけの倉庫、と言った方がしっくりくる。

適当に棚から本を引き抜いてみる。誇りが溜まって表紙が霞んで見えない。手でほろうと、金字の綺麗な文字が現れた。


「(華麗なる……悠久?くっだらねぇタイトルだな………)」


ペラペラとページをめくってみると、どうやら小説のようだ。くだらないと思いつつも、自分はそれを持って本棚の右側にある机へと移動した。

暖かい日が背中に落ちてくる。
さほど面白くも無い内容を読み進め、部屋にはページをめくる音だけが響いた。

―ガチャン……


久しぶりに聞こえたドアの音。ひょっこりと頭を覗かせたのは、黒のツインテールの君だった。

「あ、ラビここに居たんだ。探したんだからー」
「いや、まぁ……」

リナリーは頬を膨らませ、一方的にあーだこーだと言ってくる。笑ってそうだね、と答えると納得いかないような表情でこちらに歩み寄ってきた。

「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるさー。今日のジェリーさんのご飯のオススメは肉まんだって話しだろ?」
「全然違うわよ……もう」


ケラケラと笑ってやると、諦めたみたいに隣の席に腰を下ろした。


黒く艶やかな髪も、長い睫毛も、細い手足も、全部が全部綺麗だった。そんな彼女に惹かれるのも当たり前みたいなものというか。


「ラビ、何読んでたの?」
「んえ。あ、あぁ、これ?華麗なる悠久って本」
「面白い?」
「いーや。全然」


鼻で笑って、あと少しのページを止めずに進めていく。リナリーはくすりと笑って、それから何も言わずに机に突っ伏した。


進むページと共に、部屋に入る陽射しは徐々に赤みを帯びはじめる。多少茶色みを隠せないページにも赤が掛かり、どうでもいい内容が少しだけ感銘に感じた。


「人はまた巡る、かぁ。なんか変な終わり方だっなー……」


パタンと本を閉じる。ほろいきれなかった埃が同時に少し出てくる。

しかしまぁ。隣で小さな寝息をたてている人間をどうするか。というか、どうしたもんか。自分はこれまた困りながらも起こす方法を考えていた。

無防備な全身に日があたり、白い肌も夕日に染まる。気持ち良さそうに寝るリナリー。






「………。ん……っ!?!?」

びっくり人間ショーを見たかのような驚きさ。飛び起きたリナリーは何度も何度も瞬きをして、真っ赤になった頬やら、触れた唇やらを繰り返し確認していた。

してやったり。

なんて思うのもつかの間か。


「ね、寝込みを襲うなんてっ!」
「いやー、リナリー可愛かったからさ。つい」
「つ、つ、ついじゃない!」


グーで俺の胸を殴ってくる。効果音を付けるとしたら、ポコポコが正しい。寝起きなのか全く痛くはない。


「リナリー」
「えっ………?」
「好きだよ」
「……そんなの――」


狡いって君は言うんだろうけど、よっぽど君の方が狡いんだよ。気付かないと思うけどね。

昼下がり。夕方時、俺はまた人に嘘を付いた。多分きっと、頭の思考回路という張り巡らせたコードの中に、俺を狂わせたショート原因があるのだろうけど。





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