lonely boys
addorsed boys

神前と佐原

 細切れに金属音が鳴る。合奏の椅子を片付けていたら、すっかり遅くなってしまった。

「神前ってさ、帰省とかしないわけ?」
「家帰るにも金がかかるしな」
「ふーん」
「それに、あんまり親好きじゃねえし」
「そっか」

 踏み込まない。肝心なところが、少し冷たい。冷たいから、顔をしかめた。

「浩二とは仲良いよね」
「なんか、親に反発してたらお互いに庇い合うことも多くて」
「大変だねそれは」

 息を詰める。これ以上は、こいつはきいていない。聞かれてもないことまで言わなくてもいい。

「親御さんいなくて大変だと思うけど、なんかあったら頼りなよ?」

 その柔らかさにうっかり油断しそうになる。こいつが最後までついてこられるはずはないし、俺ら兄弟は、お互いがいたらどうにかなる。戒めのように自分にいいきかせる。こいつは他人に興味がないだけだ。だから優しくみえるんだ。
 とか思いこもうとしてる自分が頭悪いな。くそかよ。そもそも、あんな頭おかしい家に関わらせちゃ、いい迷惑だよな。

「ああ、なんかあったら、頼むわ」

 冷えきった諦めの嘘。



¶¶¶



 帰るか、と神前が言ったのを皮切りに俺達の間にふわふわと漂っていた空気は散って消えた。部活終わりのけだるさがまだ体に残っている。俺があまりにもトロンボーンを片付けるのが遅くて、音楽室に残っているのは神前だけだ。

「カギ、職員室に返しにこいって月見先生が」
「はいはーい」

 チャリ、と手の中で鍵を鳴らして鞄を抱えた神前が言った。

「あ」

 また鞄抱えてる。
 神前がなにかを抱えてるときっていうのはたいていちょっと不安を抱えてるときだって決まっている。ちょっとやってしまったかもしれない。神前が両親と疎遠なのは、弟の話のわりに両親の話が出てこないことからもなんとなくわかっていた。
 どこまで踏み込んでいいのかわからない。神前が完全に心を許すのは弟といるときだけだから。
 どうすればいいんだろう。

「遅くなってごめん。帰ろうか」

 いつものように、優しくできているかな。














































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