すべては夏のせい



「暑いですねー」
「夏だからな」
「う、は、はい…」

ミーンミンミンミン。蝉の鳴き声が遠くに聞こえる生徒会室。
真白の言葉になんの面白みもない返事をした響汰は、自分のそのあまりにもつまらない回答に自分自身でもびっくりしていた。

(またやっちまった…(´・ω・`)
脳内はショボーン祭りである。

「うわあ…こんなに暑いのに、部活やってる…。すごいなあ…」

響汰が一人へこんでいる間に、真白は窓の外に視線をやって独り言をつぶやいていた。
蝉の声にかき消されていたが、耳を澄ませば部活をしている男たちの声が聞こえてくる。

「熱中症にならないといいけど…」

ぽつり、と真白がつぶやく。
と、何かに気づいたように響汰の方に振り向くと、ふふふ、と楽しそうに笑う。
(畜生、可愛い…)
熱に浮かされた頭で、ぼうっとそれだけをただ思う。

「熱中症って、ゆっくり言うと、ねっちゅうしよーになりますね」
「してほしいのか?」
「え」
「え」

真白の唇から紡ぎだされた言葉に、半ば無意識のうちにそういい返した響汰。
もちろん真白も驚く、それに響汰も自分が何を言ったかに気づいて固まる。

「あ…えっと…?」

ぼぼぼ、と真っ赤に染まった真白の顔。
耳まで赤く染まっている。
それに半ば吸い寄せられるように、響汰は――――。


―――クーラーが効いていて涼しいはずなのに、触れ合った唇は、熱を持ったように熱かった。



―――これもぜんぶ、夏の暑さに惑わされたせい、なんて。



end



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