前篇

相変わらず、この学園で繰り広げもはや名物となった、会長と副会長の追いかけっこ。最近は追い詰める楽しさに目覚めた永知が、わざわざ力を抜いて運動音痴の唯が必死に走る様をにやにやと眺める変態要素も+され、ますます唯は涙目である。

「やだもう仕事は終わらせたんですか、」
「とっくに終わらせた」
「な、なんでぇ〜…っ!」

実は永知をちょっとでも足止めしようと、唯に振り分けられた仕事や、特に急ぎでもないものを永知の机に紛らわせた。そのおかげか、本来の永知の今すべき仕事よりも倍に増えた書類の山が会長の机にどーんと積まれていた。
これを処理するためには最低2週間はかかると唯は見越していたのに、見事に4日できっちりと終わらせいつもよりも倍発情して押し倒してきた永知に涙目な唯。

「だって唯は、『完璧な会長』の俺を尊敬してんだろ?」
「え、」
「そのイメージを崩すわけにはいかねえだろ」

にこり、と笑う顔は、唯があこがれていた『会長』の頼もしい笑顔そのもので。思わずきゅんと高鳴ってしまった胸のときめきを打ち壊すかのように、

「まあ唯の仕事を俺の仕事に紛らわせたっていうのは聞き捨てならねえなあ」
「え?」
「オシオキ、しなきゃな」

やです〜〜〜〜!!!!
悲鳴は永知の唇に呑み込まれていった。



そんなこんなで、永知が唯のために終わらせた仕事量のおかげで、生徒会がいつも抱えている膨大な仕事がなくなった。まさか1か月先のものまで終わらせるとは思わなかった生徒会顧問は、この先暇だというのもどうかと、少し考えをめぐらして

「じゃあ、親睦会でもやるか」
「親睦会ですか?」
「ああ。前の生徒会ではすぐにやったんだが、お前らの代になってから忙しくてなかなか時間取れなかっただろ」
「まあ…」

顔合わせした当日から、積み上げられた仕事をそれぞれ処理することに追われていましたし…。
生徒会に入ったことを後悔し涙目になった唯に、初めて欲情したのがそのときだ。と永知がしれっと暴露したことに唯はまた涙目になった。


そして迎えた当日。
親睦会だから酒もなきゃいけないだろ、と顧問公認で飲酒をする未成年たち。
唯は最初、「だめですよ、未成年なんですから…!」と拒否していたが、(というか酔っぱらって永知に何されるかわからなかったから警戒していた)「ジュースだよ」とまさかのノーガードだった会計に勧められた飲み物を口にすると、しばらくしてから完璧な酔っ払いになった。

「やるな会計」
「まあね。とりあえず約束通り、会長のクラスのあの子紹介してよ?」
「任せろ」

そんな裏取引があったことも知らず、ジュースとだまされ飲まされたお酒で顔を真っ赤になった唯は、「これ美味しいですね」とぐびぐび飲み始めた。




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