モルヒネ


「相変わらず懲りないね」
「いった、もうちょっと優しくできないの?」

垂れた液を拭くティッシュを取りに行く。ため息を吐いている僕を尻目に臨也はリモコンをカチカチと押す。天気予報で一旦止めてじっと見て、夕方のニュースに回ったテレビは相変わらずの激しい光を飛ばす。僕はと言えば消毒液を拭いていて、がちゃがちゃとわざと大きく音を立てて医療器具、包帯ガーゼピンセットその他もろもろを片付ける。すこしだけ泡だった消毒液には僕の姿が映るかな?

何が嬉しくて楽しくてわざわざ怪我をしにいくのか謎だけど聞いたところで決まった答えだ、『あいつが嫌いだからだよ』。耳にたこ。嫌い嫌いって関わらなきゃいいのに臨也も静雄も大概バカだよね。無駄な体力消費はすべきじゃない
「見てて呆れる」

臨也は顔の絆創膏を歪ませて「そうかな俺は結構楽しいんだよ」そう言った。皺の寄った絆創膏をぴっと指でつまんで目を伏せる。きみそれ、厄介な感情を持ったもんだね。(それって多分、歪んでるけど)

「恋かもね?」
…驚いた、自覚症状付きだもの。やっぱりきみは僕の周りで確実に5本の指に入る迷惑なやつだ。頭の中がぐちゃぐちゃに混ざる。どちらかというときみは混ぜる側だろうね。
「注射でもしたら治るのかなぁ」
絆創膏を伸ばすのに飽きたらしい、リモコンを押す作業に戻っている。綺麗に並ぶ試験管を見て打開策を口に出す


「モルヒネでも注射してあげようか」
「…へぇ?いいかもね。どうせ俺の頭もいかれちゃったんだ、打ってみてよ」
「ああでも君は、そうだな、脳に直接打たないと効かないかも」


それは痛そう。さしてそんな感情は顔に出さず目はテレビに向いたまま。僕の愛でも打ってあげようか、少しは素直になるかもしれない。「そんなことしたら首無しを愛すことになるだろ、俺は人しか愛さない。」くくっと笑って眉を寄せる。絆創膏はさっきまでの皺が大きく波打って余計に面積を奪ってった。じゃあ静雄はどうなの。

「馬鹿だな、あいつを愛してやれるとでも思った?ああでも、あんな化物愛してやれるのは、俺だけかもしれないね?」

嬉しそうに、憎たらしいと言わんばかりに笑ってた。それが僕には、けして向くことがないから少し悔しい、悔しい?あれ、なんだそりゃ。悔しい、あーうん、僕もそろそろ注射しちゃう?モルヒネ、モルヒネ。いっそ快感を得てやることやってそれから殺されちゃった方がいいかな。気持ちいい死ってどんなのかな、打ちすぎて死んじゃってもその時はその時で。


「新羅は俺に愛されたい?」
「冗談。」
「そう。冗談」

結局それが本心かは分からないままだけど言えやしないね。でも、悔しいんだよ、静雄しか見てない君が、映らない僕が。自分に打っちゃう前にまず君に。打って。殺してあげようかな。で、俺の中にも打って最後に君が好きだと言ってみよう。生きてても死んでも分かんないさ、だって


(きっとどれにも気付かない)


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