進行 人が神の化身だと言うなら、この人は間違いなく神に近いんだと思う。人を惑わせて導いて単純に怒り、単純に楽しむ。ほらそれだけで神様になれるんだ。でも一般人にはそれがとても難しいように感じ取られて、実際難しいからこの人には近付きたがらない。この人はどこかが欠落しているか足りないか、でもそうして神様に成り立った。 「案外、辛辣だね」 「これでも優しくしてます」 神様には近寄りたくない、それも人の存在意義かもしれない。ただ拝んで願って何かがあればそのせいにして、安息を求めてがむしゃらに欲を押し付ける、汚くて、それでも神様はそんな人が愛しいらしい。 変わってる。 「それは間違いだよ」 俺は確かに人を愛している、でもそれは本質的なもので変わってるなんてこたないんだ。神様に近い人はそう言って、指先の一点のみを見つめた。そこには何が、見えるんですか? 「人を、愛してるんですね」 「そうだね」 「でもあなたは何より誰より」 「愛が足りない、人」 神様なんて信じてないし、あいにく無宗教な僕だけど、クリスマスを祝うように、盆を過ごすように、ごく自然にこの人という神様を、信仰してたみたいで [*前] | [次#] ページ: |