新しい世界
琴未は薫と高校の校門を出た瞬間、
「そういえば、佐川君は?」
と不意に薫が呟いた。
琴未は目を丸くして
「わっ!忘れてたね。
ってか薫の彼氏じゃないの?薫は忘れちゃだめじゃんか。」
琴未がけらけら笑うと、薫も嬉しそうに
「ちょっと自分たちに必死すぎて…」
と顔を赤らめて微笑んだ。
その時、
「おい!」
「おっ!うわさをすれば。」
琴未と薫が同時に後ろを向くと、焦げ茶色の髪を短く切った、見慣れた顔の少年、佐川が歩いて来る。
いつもどおり、琴未は手を振ろうとした。しかし
(あれ?)
佐川だけではない。隣には佐川よりも大きい少年がいる。それに
(超イケメン!)
村や中学には正直、琴未好みの顔の整った子はいなかった。
テレビでしか見れない"イケメン"に琴未は心踊らせる。
「琴ちゃん、顔に出てる。」
薫は琴未の顔を見て笑うと、琴未はハッとして顔をさわった。
「その顔は受かった顔だな。」
佐川はニカッと笑う。
「ということは、佐川君も受かったんだ。」
薫はホッとしたように微笑んだ。
さっきから琴未がチラチラと佐川の隣にいる背の高い少年を見ていると、
「あっ、ああ。」
佐川は目を丸くしてから、またニカッと笑って
「こいつは城戸。さっき仲良くなった。」
と紹介すると、
「城戸でーす。よろしく。」
城戸は手を顔の位置にあげて、爽やかに微笑んだ。
(うっわ!まぶしい。)
見慣れない美少年を琴未は直視出来ない。
すると佐川は琴未を指さして、「こっちが菊池。」そして照れくさそうに、「こっちが日野。」と城戸に紹介した。
城戸は小さく「よろしく」と呟くなり、そのまま自分の腕時計に目をやると
「佐川、そろそろバス来るから俺行くわ。」
「ああ。じゃあな。」
城戸は三人に「じゃあまた学校で。」と微笑むと駆け足で去っていった。
「わたしたちのバスとは同じじゃないんだね。」
薫が微笑むと不意に
「ってか、琴未!村行きのバスもう来るぞ!」
さっきまで笑っていた佐川も自分の腕時計をみて叫んだ。
村まで行ってくれるバスは二時間に一本程度しかないのだ。
琴未はそのバカでかい声にハッとすると
「薫、じゃあまたね!」
と薫に笑いかける。
「あれ、日野は帰らないのか?」
佐川は少し寂しそうに呟くと
「お母さんが迎えに来てくれてるから。」
と微笑んだ。
琴未と佐川は薫に別れを告げると、全力に近い速さでバス停まで走った。
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