女王様


化学終了

「長谷。」
机の上に並んだ教科書や、ルーズリーフを片付けながら、響は前に立っている長谷潤の名前を呼ぶ。

「んー?」
潤は携帯をいじりながら、ふっと顔を上げた。

「この学年の女子は?」
響が興味津々に尋ねる。

潤は一瞬驚いたような顔をしながら、整っている眉を寄せた。

隣にいる奏はちらりと響を見る。

「うーん。サッカー部で話はするな。
誰だったかな。」
そういった時

「お待たせ。」
響がさっきまでぐしゃぐしゃだった机を綺麗にして、立ち上がった。

化学室から、また教室に戻らなければならない。

「ああ!そうだ。」
急に階段の途中で潤が微笑んだ。

「思い出したのか?」
響が尋ねると、
「ああ。多分一番は七瀬さんだ。」
と指を立てて二人に笑いかける。

「「七瀬?」」
双子は眉間にシワを寄せて名前を続けた。

双子のハモりに潤は笑いながら
「たしか読者モデルだったはず。俺は何回か見たことあるけど、人間じゃないわ。」
と言った直後、
「でもすごい男子から評判悪いらしい。性格が悪魔なんだと。」
そして、「もったいないな。」と続けた。


「そうだな。」
階段を登り終えた瞬間に、響は苦笑いして、教室に向かうために廊下に出る。

その直後、
「きゃあっ!」
高い女の子の声と同時に、ドンッと鈍い音がして、響が倒れた。

「響?!」
潤が驚きながら、階段を急いで登りきる。

「いって。」
響は腰と顎をさすっている。
強く打ち付けたようだ。

潤は響を見てから、反対側に倒れている女生徒を見た。
「大丈夫?」
よほどのスピードでぶつからない限り、あんな鈍い音はならない。
ぶつかった瞬間は潤からは見えなかったが、女生徒が走っていたのか。と推測する。

女生徒は無言で体を持ち上げた。
(あっ!)

目の前で目を伏せて額をさすっているのは、あの人間じゃないような少女。

(七瀬さん)

目を伏せているだけなのに、睫毛は長く、肌は白く、センターわけの茶色い髪は艶々している。
まさに美人そのものである。

潤は少し動揺しながら、パッと後ろを振り返る。
響は潤を見るなり、腰に手を添えながら立ち上がった。

一方の奏は響の分の教科書も持って、響の隣に立っているだけだ。

その瞬間、
「ねえ。」
潤は強い声に後ろを振り向いた。
七瀬さんだ。

七瀬さんは鋭い眼差しで響を睨み付けている。

「あっ。ぶつかってごめん。」
響は奏から化学の用意を受け取りながら、謝った。









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