比べないでね

ドンッドンッ
キュッキュッ

電気がひとつもついていない、しかし太陽光でほどほどに明るい体育館に、固いボールを打つ音や、シューズの音が響いている。

今は鳴海学園の昼休み。
バスケ部のキャプテンである中谷洸揮はいつも体育館で練習に励んでいた。

服装は制服のまま、汗をあまりかかないようにシューティングだけ。

「洸揮〜、さっき先生が『今日は体育館使えないから練習なし。』って言ってたぞ。」
突然体育館の入り口からよくとおる声が響いた。
洸揮はボールを腕に抱えながら声の主の方を振り返る。
そこには洸揮より大分背の高い(ざっと185ほどはあるだろう。)少年が入り口のボールを持って突っ立っていた。

「吉永…。」

副部長である吉永は背も高くて、力も強い。テクニックとスピードで攻める洸揮とはまったく逆の人間だろう。

洸揮は持っているボールをかなり遠いが入り口にあるボールの籠に思い切り投げると、
ドンッガシャン
と、ボールは壁にあたりそのままバウンドして籠に入った。

「お見事、」

吉永は笑いながら手を叩くと、洸揮は小さく微笑んで吉永の方へと近づく。
「それほんとかよ…。だったらみんなに連絡網回さんと。」
洸揮は吉永の横の壁にもたれた。
こうならんで見るとほんとうに体格の差がすごい。

「久々の休みか〜どうしよ。吉永どうすんの?」
洸揮は無邪気に笑いながら吉永の肩を叩く。
「俺は…。暇じゃないぞ。お前は久々に彼女に会いに行けよ。」
吉永はニヤリとしながら丁度叩きやすい位置にある、洸揮の頭をバシバシ叩いた。
「痛いよ!…でもそうだね。たまにはさあちゃんに会いに行こうかな。」

早雪…さあちゃん。洸揮の昔からの幼馴染みだ。中学までずっと一緒だったものの、高校は都内で有名な都立の進学校に行ってしまった。

「とりあえずメールしてみようかな。」
洸揮はポケットからスライド式の携帯を取り出した。

ーーーーー

「はー。」
早雪は小さくため息をはいた。
それは憂鬱なため息ではなく、高まった鼓動を静めるためのものである。
洸揮と会うのは2ヶ月ぶりである。
全国を相手にしている強豪校だけあって、練習の時間は多い。
正直、休みがすごく少ないのである。
そんな中、平日に洸揮と会うのだから。

(えっと、4時半にわたしの家で待ち合わせだよね。)
早雪は左腕の銀の腕時計を確認すると、もう一度大きく息をはいた。


「早雪大丈夫?さっきからため息ばっかり。」
隣を歩いている藤原咲希は笑いながら早雪の顔をのぞきこむ。
「へっ!?大丈夫だよー。ありがとう!」

友人と笑いながら歩いて、校門を出た瞬間。
「さあーちゃん!」
聞きなれた声が耳に飛び込んできた。
(まさか、こんなところに洸ちゃんがいるわけないよ。)とスルーを決め込んだ時だ。

「ちょっ!早雪!」
その声にハッとして、声の方に目をやると、顔を赤らめてにこにこしている見慣れた顔があった。
「えっ!?なんで洸ちゃんが?
自転車…そのまま来たの?」
早雪は少しあたふたしながら小走りで洸揮のもとへ向かう。

「いやぁ、さあちゃんをびっくりさせたくてさ〜。」
相変わらず顔を赤らめながらにた〜っと笑った。

「早雪!?あれ、鳴海の中谷くん?まさか、」
後ろから咲希がひょこっと顔をだして洸揮を見つめる。
「ち、違うよ!ただの幼馴染み!」
「え?さあちゃん…「洸ちゃんいこう!」」
と、早雪は家の方向へ歩き出した。

(帰り道はわたしを知ってる人はみんな私たちをみて、こそこそ言っていた。)
ーーーーーー

「さあちゃん?」
人通りが少ない住宅街の公園で洸揮は自転車を止めた。
「どうしたの?」
早雪は洸揮の方を振り向くなり、洸揮の止めた自転車のサドルに座った。

「女の子はね、自分よりキラキラした男の子と歩くのが怖いの。」
早雪は洸揮を見ないで地面を見ながら静かに呟く。そう、中谷洸揮…知ってる人は知っている選手だ。

「洸ちゃんごめんね。せっかく来てくれたのに、気分わるくさせちゃって、」
洸揮はじっと黙って早雪を見ている。

「帰りのみんなの顔見たでしょ…?こんな地味な私が男の子と歩いているのにびっくりしたような顔。」
早雪は今にも泣き出しそうな顔をしている。それをみて
「ごめんさあちゃん。さあちゃんがそんなこと思ってるなんて、今日はじめて知れたよ。言ってくれてありがとう。」
洸揮はポケットに手をツッコミながらにっこり笑った。
早雪もその笑顔に落ち着いたのか、
「ううん、洸ちゃん。わたしこそほんとにごめんね。」
その瞬間早雪の目からぽろぽろと涙がこぼれる。

「じゃあこれからはさすがに学校にいくのはやめるよ!二人でこっそりだね〜。」
笑いながら洸揮は早雪の頭をポンポンする。
「洸ちゃん、大好き。」

ぽろぽろ泣いてる早雪の唇に洸揮はそっとキスをした。

「俺も。」




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