コラボ(惺瀾さん)

惺瀾さん宅の友とコラボしています。

ーーーーーー


「あ!遅いよ大森君」
目の前には、緩くパーマを当てた驚く程の美少女が目を丸くして怒っていた。

〜鳴海学園、運動場〜

今日はカーディガンを一枚羽織ってちょうどいいくらいの、春の休日だった。


俺は9時10分を指している自分の黒の腕時計を見るなりため息をこぼす。
「いや、キックオフ9時半やろ。まだやん。」

すると美少女は目を伏せるなり、
「一人でいるの寂しいじゃない。」
と、運動場に体を向けた。


(なんでこんなに可愛い子が大倉なんかと…。)
俺はこの大倉の彼女、池田晏奈に会って話すたび心の中でこの愚痴をこぼしている。

池田さんが大倉を見る目は他のものと全く違う。
きっと、大好きなんだろう。

「あっ!恭がいる。
三年生とかに混ざって…。すごいね。」

今日は大倉のデビュー戦だ。
この時期に二年でレギュラーなんて、並大抵のことではない。


元々鳴海学園はスポーツでとても有名だ。(スポーツ推薦が一部あるくらい)
勉強と部活をほどよく両立できるシステムである。

サッカー自体は、スポーツ推薦の枠には入っていないが、それなりのプレイヤーが鳴海学園には集まっていいた。


「ってか、なんで俺のこと誘ったん?」

池田さんはきょとんとしてから
「だって、恭が「大森が来たがってる」って言ってたから。」

俺はその言葉に驚く。
「なんでやねん!そんなん言うかいや!
あいつ俺の試合も見たことないくせに、よう言うわ。」
池田さんはそれを聞いてクスクス笑った。
「恭らしいね。」

「そ、そうや。
相手どこ?」
俺は池田さんから目を反らすと、運動場を覗き込んだ。
池田さんは携帯をポケットから取りだし、数秒いじる。
大倉からのメールを探したのだろう。
「公立の頭いいとこ。」
池田さんは携帯の画面を目を細めて見ながら呟いた。

「アバウト〜。」
大倉らしい説明だ。

「とにかく、青と白が鳴海、黒が他所だよ。」
池田さんがバッと指をさす。

その先では、鳴海と今日の"公立の頭いいとこ"が挨拶をしていた。

「んっ…?」

ーーーーー

シードの鳴海はなんとか、相手チームをくだすことが出来た。
「恭、かっこよかったね。」
となりで池田さんは満足気な表情だ。
大倉はそれなりに触り、パスし、それなりの活躍をしていた。

まあそんなことは今はどうでもよかった。

あの茶髪…
今日の相手チームに一人だけ茶髪の生徒がいたのだが、どうもあの顔に覚えがあるのだ。

ちょうどその時、
「晏奈、モリモリ」
大倉の低い声が耳に入った。
「恭!」
池田さんが叫んで走っていく。
俺も自然に顔をあげると、池田さんに抱きつかれた大倉が。…しかも後ろには、荷物を背負って帰ろうとしているさっきの茶髪が歩いていた。

「あっ!」
その瞬間、俺は完全にそいつを思い出す。

俺の体は勝手に茶髪に向かって走り出した。

「おぉ!大森もか!」
なぜか大倉が両手を広げてスタンバイしているが、ガン無視。

俺は茶髪の方に向かった。

「ちょっと!」
俺は茶髪の少年に声をかけた。

俺と同じくらい身長で、目がスッとしたいわゆるイケメンだった。
茶髪の髪がよく似合っている。

「んっ?」
茶髪の少年は不思議そうな顔でこちらを見上げる。

なぜ話しかけたのか、俺にもよくわからなかったけど
「えっと、うちの店によく来てますよね。」
自分で話していて、いつも自分の敬語がちゃんと相手を敬っているように聞こえているのか心配になる。

昔から声が低く、スポーツしている時でもよく
「だるそうに返事するな!」
と何回か言われた記憶がある。とにかく損をしていると思う。

俺の質問に茶髪は眉間にシワを寄せた。
「俺んち、茶屋です。
大森っていいます。」

その瞬間、茶髪は顔をあげ
「えっ?大森さん?
いつもお世話になってます。」
と涼しげに笑うと、ペコリと頭を下げた。

「茶道部のお菓子、大森さんのところが一番合うんだ。」
と嬉しそうに笑う。

「兼部してるのか?」
後ろから、陽気な低い声が飛んできた。大倉だ。

「いえ。俺は茶道部ですよ。」


「…。」
俺は固まった。きっと何も言葉を発しないことから、大倉も固まっているのだろう。

「お前三年じゃないよな。サッカーは?」
大倉が恐る恐る尋ねる。
俺も大倉も"元サッカー"という言葉が聞きたかった。

「うちは弱いし、人数が足りないんで、助っ人に入りました。元々スポーツ好きなんで。」
涼しげに笑う茶髪を見て、俺はゾッとした。

「助っ人ってレベルちゃうで。」
その時、
「あれ、やっぱりあなたテニスの団体戦出てたよね。」
晏奈が大倉の隣で笑った。

「「えー!!」」
俺と大倉は全く同じリアクションをとる。

目の前の茶髪は運動神経抜群だったのだ。
「お前名前は?メアド!」
急に何を言い出すのか、大倉がニコニコしながら自分のスマートフォンをポケットから抜き出す。

「俺は河野友。」
と言いながら、茶髪自身もポケットから携帯をとりだし、二人は何故かアドレスを交換している。

「なんでやねん…」
俺が終わるまで見つめていると、何故か大倉はもうひとつ黒のスマートフォンを操作して、またアドレスを交換していた。
「って、なんでやねん!
それ、俺のんやん。勝手にとんなや。」
「友達の輪だ。」
大倉はニカッと俺に携帯を返す。

「…。」
「大倉さん、大森さんっていうんだ。よろしくお願いします。」
茶髪は携帯の画面を見てにっこり笑った。

「おいおい。友達なんだから、敬語はよしえさん!」
「それ俺の姉ちゃんやんけ、いつも通り"よしこさん"にしろや。」
速すぎる展開についていくのがやっとだ。
大倉のこういうところがめんどくさい。

「じゃあ、河野よろしくな!俺たち、同じ匂いがする!」
大倉はにっこり笑うと、
「晏奈帰る?」
と池田さんを振り返る。

本当に展開が早すぎる。
「じゃあな〜」
そして大倉はそそくさ池田さんと帰ってしまった。

無責任にも程がある。

「よ、よろしく。河野。」
俺は河野にいびつな笑みを送る。
「そうだ。今から帰ります?俺もついていっていいですか?」
茶屋のことだろうか。
「うん。茶屋来るのか?」

「お菓子、おすすめ教えてください。」
河野はにっこりと微笑んだ。




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