junk『シャッターチャンス
junk『迫る


 風が吹いているが空気は生ぬるいので寒くはない。もうすぐ冬がおわるらしい。(『シャッターチャンス』本文より)
 ちょうど、そのように感じる日があって、それをきっかけに書いたお話です。二月の中盤でした。

▼登場人物
イクミ-サン【育巳さん】
社会人。黒髪短髪。小さな村で郵便配達をしている、のんきで照れ屋なお兄さん。
ユキオ【雪緒】
『シャッターチャンス』では中学生か高校生くらいで、『迫る』では少し成長している。育巳のいとこ。

▼祖母
 花好きの祖母は、わたしの父方の祖母がモデルになっています。数年ほど前から、実家で祖母と一緒に暮らしているのですが、庭には祖母が育てている植木や花がたくさんあります。わたしは名前も知らない植物です。今はわたしは上京して一人暮らしをしており、実家には年に二度ほど帰るだけなのですが、その度に植物は増えているように思います。とても楽しいです。

▼関係
 雪緒は、男性として郁巳さんが好きです。育巳さんは、従妹として雪緒が好きで、雪緒の好意には気付いていません。趣味が合って、のんびりできて、いい友人や実の妹のように思っています。けれど『迫る』では、少しだけ気持ちに変化があります。

▼不安
 『迫る』は『シャッターチャンス』の数年後のお話です。ここで育巳さんが抱えている悩みには、わたしの気持ちが大きく反映しています。母方の祖母が脳梗塞で倒れた際に、お見舞いに行った集中治療室や、家族の様子、特に母を見ていて思ったことです。好きな人には長生きをしてほしいし、できるなら最後まで健康でいてほしいものですが、それは難しくて、いつ誰に何があるか分かりません。そういう出来事が身近に迫るほど、不安は大きくなります。目を逸らしていたくても、できなくなるときがあります。育巳さんはそういった状態でした。