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12.


『あ、これあげる』

と言って背後に隠していた手に握っていたのは、まさかのスーパーの割引券。

「包丁じゃないの!?違うの!?包丁とかメスとか斧とか殺傷力のある系じゃないの!?」

『あるわよ、殺傷力。顔面偏差値の低い奴には期限の切れた割引券。イケメンの彼には期限が一番長い割引券よ、うっふん!』

「…なんか違う殺傷力…」

『都市伝説も進化するのよ』

「うん、今時の子は金欠怖いよね」

俺、疲れてぐったりしてる。

うん、1979年ご誕生から考えて年齢的にはスーパーの割引券を持っていても全く違和感がないが、それを期限ごとに分けるとか完全に几帳面な主婦だ。包丁なんか今時魚を捌いたり、肉を切るのにしか使ってなさそう…。

「ありがとう、お姉さん」

『まぁ…!』

「でも、俺はスーパーの飯よりもお姉さんの手作り料理が食べたいな。…ダメ?」

「真木お前どうしたの、ドSどこ行ったの?」

『作ってくるわ!!』

と走り去る彼女。手を振って見送る真木。

なんというか、…グッと疲れた気がする。様々な都市伝説には様々な対処法が存在するが、顔面偏差値で何でも片付けられると思う。

真木は満足そうな目で口裂け女を見送ると、ニヤリといつもの大魔王の表情で笑った。そして、干し柿のパックに手を伸ばしながら、

「チョロいな」

最低な野郎である。

だから、干し柿のパックを真木から遠ざけたが、手が長いこの野郎は簡単に取りやがった。

干し柿5個パックの最後の一つを俺に見せ付けるようにヒラヒラさせる。表情がめちゃくちゃ鬱陶しい。真木を思いっきり睨みたいのに、俺の視線は干し柿に釘付けでどうしても離れない。

それで遊ばれる。干し柿をこっちでヒラヒラ、あっちでヒラヒラ。…真木なんて嫌いだ。

「食べたいか?」

「別に」

食べるなら食べてしまえばいいのに、咥えるだけで食べようとしない。俺がついにプイッと視線を外せば、僅かに笑いを耐えた声がした。

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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。