『あ、これあげる』
と言って背後に隠していた手に握っていたのは、まさかのスーパーの割引券。
「包丁じゃないの!?違うの!?包丁とかメスとか斧とか殺傷力のある系じゃないの!?」
『あるわよ、殺傷力。顔面偏差値の低い奴には期限の切れた割引券。イケメンの彼には期限が一番長い割引券よ、うっふん!』
「…なんか違う殺傷力…」
『都市伝説も進化するのよ』
「うん、今時の子は金欠怖いよね」
俺、疲れてぐったりしてる。
うん、1979年ご誕生から考えて年齢的にはスーパーの割引券を持っていても全く違和感がないが、それを期限ごとに分けるとか完全に几帳面な主婦だ。包丁なんか今時魚を捌いたり、肉を切るのにしか使ってなさそう…。
「ありがとう、お姉さん」
『まぁ…!』
「でも、俺はスーパーの飯よりもお姉さんの手作り料理が食べたいな。…ダメ?」
「真木お前どうしたの、ドSどこ行ったの?」
『作ってくるわ!!』
と走り去る彼女。手を振って見送る真木。
なんというか、…グッと疲れた気がする。様々な都市伝説には様々な対処法が存在するが、顔面偏差値で何でも片付けられると思う。
真木は満足そうな目で口裂け女を見送ると、ニヤリといつもの大魔王の表情で笑った。そして、干し柿のパックに手を伸ばしながら、
「チョロいな」
最低な野郎である。
だから、干し柿のパックを真木から遠ざけたが、手が長いこの野郎は簡単に取りやがった。
干し柿5個パックの最後の一つを俺に見せ付けるようにヒラヒラさせる。表情がめちゃくちゃ鬱陶しい。真木を思いっきり睨みたいのに、俺の視線は干し柿に釘付けでどうしても離れない。
それで遊ばれる。干し柿をこっちでヒラヒラ、あっちでヒラヒラ。…真木なんて嫌いだ。
「食べたいか?」
「別に」
食べるなら食べてしまえばいいのに、咥えるだけで食べようとしない。俺がついにプイッと視線を外せば、僅かに笑いを耐えた声がした。
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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。