翌日、火曜日。
いつもの通り、真木は出かけていった。
因みに真木は三年生らしく、授業はそんなに多くないが、サークル仲間や友達と遊びに行ったりバイトだったりと帰りは遅い。
そんなに帰りが遅くて都市伝説に襲われないのかと聞いたが、そこは問題ないようだ。真木曰く、複数でいる時に手出しはされないし、一人なら一人の時の対処法がある。物理的解決とか。
で、真木の帰りは遅くなると高を括って、台所のアサリ達に養殖場での話を聞いていたのに、まだ日射しも弱まらない夏場の5時という早い時間に玄関が開き、真木が帰ってきた。
「おかえりー。なんで帰ってきたの?」
「はぁ?俺の家なんだけど?」
今日も元気に大魔王様している。
頭がおかしいんじゃないのか、という目で俺を見て冷蔵庫を開ける。入っているのはミネラルウォーターと麦茶が数本と、いくつかの卵と、チャーハンの素やら調味料だけだった。
しおりちゃんがいれば真木も食材を揃えただろうが、彼女が来たくないと言った今、冷蔵庫は空っぽだ。作ってくれる人が来なくなって、真木は毎食コンビニに片付けている。
「おい、スーパーに行くから付き合え」
「え?幽霊の俺が?」
「ちっ。…てめぇでもちったァ役に立つ」
「お?」
「…と思う」
「…いい感じにぶち壊しだよ、それ」
真木に鼻で笑われた。
「ちょっとこっち来い」
指をクイッて曲げられて呼ばれる。
アニメやドラマの中でならまだしも、現実でこの動作をする人を見たことがない。俺は絶対に似合わないし、確実に友人に半年はからかわれると断言できる。だが、真木の俳優以上の顔ならなんでも許されて、むしろ魅力的だ。
心底認めたくないし、むかつくけど。顔面偏差値による差別が起こる社会が嫌いだ。
「ん?」
で、素直に近寄った俺に真木は、
ちゅ、と、
「はぁあああああああ!!??」
唇にキスしやがった。
額とか頬とかならまだしも、いや、それでも摩擦で火が起こるくらいに擦っているだろうが、よりによって唇にキスしやがったのだ。
慌てて飛び退いたが既に遅く、唇に柔らかい感触が残っている。気持ち悪いというか、不可解というか、おそれおおのくというか、色々混ざりあった目でとりあえず距離を取った。
真木は相変わらず涼しい顔だ。
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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。