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18.

『僕は、…僕は』

ドラゴンが小さく呟いた。

『僕は君と契約したいんだ』

自信のない声は今にも消えそうだ。

体を丸めて小さくなって、彼は俯く。こちらを見るのが怖いと言うように私の視線から逃げ、それでも彼は意を決して言葉にした。

『もう一度契約して、今度こそもう二度と破棄したくない。君を誰かに渡したくないし、一番近くにいて君をずっと愛していたい』

恐る恐る彼が顔を上げて私を見る。

そこに間違いなく愛情は浮かんでいた。だが、恐怖と孤独が愛情の邪魔をしていた。

『僕は一度身を引こうとした。君達人間には人間に相応しい幸せがあるのさ』

「それがエレナとの結婚?」

『…僕はそう思った』

「残念だけど、このザマだ」

自嘲的な笑みが漏れてしまった。

『君はいずれ年を取っていく』

「若さを失った私が嫌かい?」

『そうじゃない!…そうじゃなくて、君はきっと後悔する。君と同じように年を取る妻が欲しいと思うだろうし、子供達だって』

私はドラゴンの言葉を遮ろうとした。

確かに人間には人間の幸せがある。聖獣の命の物差しに合わせるのは不可能で、そんなことをしても幸せになれないだろう。

だが、エレナとは敬いあっても愛し合ってはいない。そんな彼女と仲良く年を取っていってもお互いに心の中に痛みが募るばかりで、死ぬその瞬間には後悔しか残らないと思う。

子供は残した。二人も。これで王家は安泰だから、私は王家としての役目を果たしたから。

(だから、君を愛させてくれないか)

言葉は舌先にまで転がった。

だが、言おうとした瞬間に絶句させられた。

『それでも僕は君を愛したい、カルナダ』

彼の目があまりにも真剣だった。

恐怖とか孤独とかは消えていない。だが、どこまでも深い愛情がそれらを打ち消し、怯えながらも彼は一歩踏み出そうとしていた。

真っ直ぐな瞳。あれだけ契約を望んで用意した言葉はドラゴンの眼差しの前で全て忘れてしまって、ただ彼の言葉を聞いていた。まるで告白みたいな少し恥ずかしい言葉を。

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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。