ただし、これには例外がある。
ユニコーンだ。仮想世界などを行き来できる彼、そして、彼が連れてきた人物に限って現実世界から記憶世界に渡り、客人として来訪する。だが、私が現実世界に行くことはできない。
そして、最後の三つ目。
魂を切り離す時、切り離した魂が消滅する時を指定できるが、チャンスは一回のみで変更不可。
つまり、ドラゴンが死ぬまでと指定したなら、気が狂いそうな数千年もの時間をひたすら過ごさなければならない。途中で早く消滅したり、消滅を後に伸ばしたりすることはできない。
「よく考えることね」
「私はこれで構わない」
「そんなに焦っては後悔するわよ?」
「私は後悔しないと誓うよ」
愛しい人と共にいられるのなら、そして、彼をおいて逝かずに済むのなら。
たとえ気が狂いそうな時間を一人で過ごすことになろうと、最期、消滅する時は共にあることを思えば、なんだって耐えられるんだ。
「決めたらまた私を呼びなさい」
アルテミスが指先を剣に滑らせる。
彼女の指から血が出ることはなかったが、ぷつん、と糸が切れる音を確かに聞いた。
「じゃあ、私は失礼しようかしら。…あぁ、彼の魔力は切っておいたから、これであなたは自由に聖獣を呼び出せるわ。呼び出した聖獣が契約してくれるかは知らないけれど」
「ちょ、待っ、」
光の粒を残して、アルテミスは消えた。
まるで砂が崩れように、だが、砂よりずっと美しく幻想的に。崩れ落ちた光の粒は淡い光を放ち、窓から入り込んだ僅かな風と共に舞い上がってはついに溶けて消えていってしまった。
最後の一粒が消える前、彼女の声がした。
『人の子よ、あなたに幸あれ』
その一粒も消えていった。
まさにその瞬間だった。バンッ、と蝶番すら吹き飛ばす勢いで部屋のドアが開け放たれ、そこから焦った表情のドラゴンが現れた。
「ど、どうしたんだい?」
「今、誰がいたの?僕の魔力を切れるなんて、…始祖の誰かで間違いないね。何もされていないかい、カルナダ?」
「私は何もされてない」
少しだけ言うか迷って、だが、黙っている意味もないと思う。部屋の中をキョロキョロ見回すドラゴンに、私は来客の正体を告げた。
「光の女王が来たよ」
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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。