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手の届かない距離

※慧side

(本物の恋人の前で偽物の恋人の名前を考えろって方が無茶ぶりなんだよッ!!)

焦りばかりが空回りする。

焦りと、…緊張。

仕事へのものじゃない。確かに情報屋の仕事を請け負う時は適度に緊張していた方が油断せずに済むんだろうが、皓がペアなら不安なんてものはない。

そうじゃなくて、…皓だ。

一見いつもと変わらない態度でなんでもスマートにこなして目的を達成していくが、なんていうかいつもよりそっけなくて、

(…距離をとっているような気がする)

昔はなかったそれは気が付いたら生まれていて、どうすればいいのか分からなくて対処できない間に開いてしまった。手を伸ばせば届く距離にいるのに、どうやっても心に触れられない。

その距離感に心が悲鳴をあげて、焦る。どうやって接すればいいのか分からなくて、皓の隣は落ち着くのにどこかで緊張している自分がいた。

どれだけ偽物の恋に慣れていようと、本物の恋ではあたふたしてしまう。

たぶん、分かっているんだろう。偽物の恋人に嫌われても仕事の失敗として済むが、本物の恋人に嫌われるとやりなおすチャンスさえ与えられずに彼を失ってしまうかもしれない。

だからこそ、怖い。

(心当たりがねぇわけじゃねぇんだが…、どうすればいいのか分からねぇ…)

俺の仕事が原因だと思う。

休日に恋人をマンションに残して、一人だけ外で女に会う。俺を見送る眼差しは平然さを強がってはいたが、寂しさを隠せてはいなかった。皓がいくら俺の仕事を認めていても、決していい気分になれないのは当たり前だ。

本当に悪いとは思っているんだ。だが、どうしても聞きたいこともあった。

(あの指輪はなんなんだ)

…あの花束を誰に贈ったんだろうか。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。