17.
そして、次の言葉についに頭が冴えた。
「そう言えば、俺、まだアンティを払ってなかったな。なんか言うこと聞いてやるよ。疲れてるなら肩でも揉んでやろうか?」
確かに、結果は奴が勝った。
だが、蓋を開けてみればどうだ。
頼まされるはずだったボトルは偶然にもこの場にあるロゼで、奴はまだアンティを払っていないから代わりに何か要求を聞いてくれる。
(これって、俺が勝った時に想定していたシチュエーションじゃねぇかよ…)
俺に気を遣っている。
俺を優先してくれている。
そう分かった瞬間、どの要求にするかなんて頭から飛んでいってしまって、捨てられたカードの山を手に取った。俺達のハンドじゃない。最終的なハンドを決める前に捨てたカードの山だ。
俺の手の中からカードを奪い返そうと慌てる様子に、疑惑が確信となっていく。
(まさか、)
カードを見た。
まずは俺が捨てたクラブのAとクラブのK。
その下にあったカードは、スペードの10とスペードの7。そして、一番下にあった5枚は、
「…ダイアのストレートフラッシュ、」
それは紛れもなくダイアのK、Q、J、10、9だったんだ。一枚の例外もなくスートは全てダイアだ。
信じられなくてそいつを見ると、悪戯がバレてしまった子供のように恐る恐る、そして、気不味そうにこちらを見ていた。言い訳を探しているらしいが、言葉は上手く出てきていない。
「お前、」
「これは、その…!」
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