『我らが王』
ペガサスが俺に向かって呼びかける。
彼はレイロさんの後ろから出てくることこそしなかったものの、興奮を隠しきれないように風になびく尾が嬉しげに揺れていた。
『ペガサス、お久しぶりだね』
『えぇ、ご無沙汰しております』
イチルの肩にいる俺を見上げる。
『あなた様が旅立たれてから半年…、我ら聖獣にとっては短い半年ですが、あなたは変わられた。とても凛々しく、お強くなられた』
『確かにいろんなことがあったけど、今、小鳥じゃなくても鳥の姿だよ?分かるの?』
『勿論ですよ、我らが誇り高き王』
俺達の会話にレイロさんが瞠目する。
鳳凰がいることは事前に知っていただろうし、鳳凰の姿では初めて会う。だが、かつてペットと勘違いされた小鳥と同じ声をしている俺、そしてペガサスの言葉に硬直していた。
あまりにショートするものだから、小鳥姿に戻ってレイロさんに手羽先を振ってみた。
『おーい、レイロさーん!』
そこでやっとハッと我に戻り、
「わ、私のことはレイロとお呼びください、風の始祖様。今までの無礼を、」
ピシッ、と惚れ惚れする敬礼を見せてきた。
『いや、無礼なんてされた覚えがないけど』
というより、風の王だからってそんなに畏まらないでほしい。むしろ俺が緊張する。
苦笑いでレイロさんを見て、太陽の位置を見た。カルナダ様と約束した時間は近付きつつあって、もう広間に向かった方がいい。
だが、ふと視界の端、目立たない塔の陰にひっそり隠れているものを見付けた。
キラキラと煌めく黄金色の塊。
その見慣れた色を認識した瞬間、俺は翼を広げていた。俺が飛んだのを見て黄金色の塊はビクッと跳ね、その場から離れようとしたが、この俺が逃がそうとするはずもなかった。
『イチル、先行ってて。俺は寄り道する』
「お前ってマジでふらふらするよな」
『すぐに行くから』
「…わぁーったよ」
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。