【Salom】
出会いは13歳。
初めて接する担当上忍は、忍ということを差し引いてもあからさまに胡散臭い男だった。
振り回され、守られ‥‥自身の成長の為に離れ、そして再会し。
漸く同じ土俵に立つことができた。
皆、一歩一歩前へ進み、わたしも前進する努力を惜しまなかった。
色々と頭を悩まされる事柄も多く、日々の雑務に追われる中、里は暁――ペインによる急襲を受けた。
それは、木の葉のほとんどを崩される程の。
無事でない者はいない。
今、目の前にいるこの人も。
師であり、上司でもある、
はたけ、カカシ。
傷は胸元を貫いており、あと数ミリずれていたら致命傷になっていただろう。
ほんの、わずか――その数ミリのおかげで、今この人の心臓は辛うじて動いていた。
今は治療も終わり、血の抜けた青い顔で眠っている。
眠っているといっても意識は混濁し、余談は許されない。
点滴をチェックし傷痕の残る左の前髪そっとを除ける。
マスクのない顔を"あの部屋"以外で見ると、とても違和感がある。
ほんのり朱い唇は今は白っぽく。
今カカシが呼吸をしているのが奇跡なのだとサクラに知らしめた。
そっと、曲げた指で冷たい唇に触れ、その手を頬に添える。
ゆっくり、傾ぐ身体。
ふくりとした唇に己の唇を軽く重ね、身体を起こす。
「――あいつの首を、必ず」
銀の大皿に。
わたしの心を共に、乗せて。
ぱたんと閉めたドアに手を添え、
誓った。
(ペインの首を銀の大皿に)
(銀の大皿に乗せたあの首に噛み付こう)
(口吻けを、)
ヘブライ語のシャローム(平和)に起源する女性名。
オスカー・ワイルドの戯曲[サロメ]より。
タイトル表記は仏語です。
20081107-20090201