楽あれば苦あり。(水戸黄門でも歌ってる)
行きはヨイヨイ帰りはコワイ?(落語であるよね)

―――なんかもー全然違うけど、つまり、オレにとって良い事ばかり・で、――済むハズがない!!

確かにイタリアンのフルコースをゆぅ〜ったり楽しんで買い物、お散歩、カフェは楽しかった。

でも買い物では、普段のオレを知ってる彼女らの標的(餌食でもいい)になってしまった。

服屋では、片っ端からの着せ替え人形。
もう、好きにしてくれと思ったけど、オレにフリフリとか、クラブ系とか、似合うと思うか?
奇抜なファッションなんて、首から上はモザイクだろ。

自分じゃ選ばないワンピースやスカート、ショートパンツのスーツとかさ、見てる方が楽しいのに、クロームに「ボス、お揃い‥‥」なんて袖を摘まれながら言われちゃあ、男が廃る。
ビアンキの、シンプルなトップスにデニムな普段着ならまぁ、違和感はないけど、ハルや京子ちゃんとお揃いで買ったやつ、ふわふわ風にそよぐいかにも女の子ーって感じの服は、ちょっとキツイなぁ。
結局は着ることになるだろうけどさ。
なるべくタンスの肥やしになってて貰いたい‥‥な‥‥‥。


服屋巡りが終わると、彼女らは喜々として『LA PERLA』って高っそうな店と『INTIMISSIMI』ってイタリアの都市で必ず見かける下着専門ブティック(いつも目を逸らせてたのに!)にオレを引きずり込み、(オレは嫌だって言ったのに)(邸の女の人が用意するもので充分コト足りる)なんだかやたらプリティやらセクシィだとかのインナーウェアを上下や3点セットだとかで与えられた。
たしかに色合いが綺麗で柄の配置とかも美しいとは思う。
キャミソールでもインナーとアウター、ナイティってあるんだな。
違いが良く分からないけど初めて知った。
ぱ、ぱんつも色々あるのな‥‥。
イタリアの下着はみせるものだから、すっげえ綺麗なレースが全面を覆ってたりだとかで、下着の形より、もっぱらオレはレースの緻密さを鑑賞してた。
オレにはよく分かんなかったけど、ハルはカップがないからなんちゃら〜とか言ってた。
芸術品みたいに綺麗は綺麗だけど‥‥結局は下着だろ?
羞恥やらいたたまれなさとかで、生きた心地がしなかったよ。
年末にはパートナーにプレゼントする為に、この下着屋に男性で溢れるってゆーイタリア人の気がしれない。
オレ、男のままだったら絶対下着屋なんて足を踏み入れることも無かったろーなぁ‥‥‥。


ところで、勝負下着って、何の勝負の時に使うんだ?



□□□□□



そして夜は女だけのディナーパーティー。(ここからはルッスも参加だ)
ビアンキが、オレが頭を抱えてる問題の爆弾を落としてくれた。

「ツナ、あなたどうする気?」

唐突な問いはハテナでしかなく、そんなオレにビアンキは溜め息を吐く。

「結婚よ」

ブッハ、と口に入ってたものを吹きそうになったけど、堪えて飲み下してから改めて口を開いた。

「どーもこーも、ボス就任前後に、んなメンドくさいこと、できるワケないじゃないですか‥‥」

「だからよ。後援者がいた方がスムーズな場合もあるわ」

「オレ、あんまり結婚でのメリットを求めてないっていうか‥‥。相手は男になっちゃうし‥‥メリットを求めるとすれば、同盟ファミリーですか?」

「ええ、ボスクラス。キャバッローネが年齢的にも丁度良いわ。候補には、あるんでしょう?」

にっがーい顔のオレに構わず、ビアンキは続ける。

「ザンザスも血統は外だけど、きちんとU世の外戚だと認められてるわ。ヴァリアーの忠誠は\世のものだし、]世にも必要なものでしょう。古参や幹部はこの2人を推してるそうよ」

「そォねぇ、ツナちゃんがウチのボスと結婚してくれると、私達も安泰だわぁ」

「わー、うっぜーーめんどくせーーーー」

したり顔のビアンキとルッスを見て、ナフキンを放り投げ、キャッチする。

「でも、同い年のロンシャンくんは出て来ないんだね」

「格下ですもの。結婚による同盟を結んでも意味がないわ。それに、アレと添い遂げたいの?」

「イイエ。エンリョします‥‥」

格下切り捨ては、リボーンと同じなんだね、ビアンキ‥‥。
そこへ、怖ず怖ずとハルが「あのぉ」とちっちゃく手を挙げる。

「なぁに、ハル」

「守護者の皆さんは、その中に入りますか?」

小さな声でのハルの質問に、ほぼ全員がニヤリとした。

「あらぁ、スモーキンボムは入ってないわよォ。安心して」

「ル、ルッスーリアさん!」

図星を差されて慌てるハルに肯定すると、それはそれで疑問らしく、聞き返されたオレはビアンキを見る。

「ビアンキ、話して良い?」

頷いてくれたビアンキを見て、甘いシードルで咥内を潤してから「厭な話をしてもいい?」と前置く。

「――あのね、獄寺くんとビアンキは姉弟だけど‥‥獄寺くんは嫡出じゃないんだ」

「チャクシュツ?」

「そう。イタリアって、ローマ・カトリックだろ?」

「―――あっ」

「ボンゴレだけじゃなく、オレらの世界じゃダメなんだ。世襲制だしね。‥‥マフィアの世界も狭くってさぁ、後進的だし、噂が広がるのも早いんだよね。母親の恋しい時に、大人の口さがない噂話ってどう? それも母親を悪者にしてだ。父親はそれに対して何もしなかった。できなかったんだけど。だから獄寺くんは日本に来たし、“オレら”に救いを求めた」

「悪童の頃のスモーキンボムと今とじゃ、別人みたいよネ!」

「うん、そうだね。‥‥女って判った時にね、リボーンに一番最初に言われたのが、守護者に据えたままにしたいなら、獄寺くんとだけは深い関係になるな、だった」

「隼人も私という姉である女がいたから、いち早くツナが女だって感じてたわ」

「だから獄寺くん自身も部下っていうポジションに固執してただろ? オレ自身に深く関わろうとしなかったよ。‥‥最初は十代目じゃなきゃオレ自身はいらないのかと思ってたけど、女だと言った時の獄寺くんの態度でわかったよ。彼はとっくにオレの本質から慕ってくれてたんだって。その上でオレを十代目として接していてくれたんだ。だから、彼は最初から今でも、献身的な部下であり、かけがえのない友人で在り続けている。オレ達の間に男女の感情はありえないし、そのポジションを求めていないんだよ」

オレの話に、ハルとビアンキは勿論、京子ちゃんもクロームも、ルッスーリアも黙って耳を傾けていた。

男が女になったっちゃー、結構な重大事項だけど、獄寺くんは既に全部受け入れてた。
『女でした』と話した中で、唯一彼だけはホッとした顔をしてくれたんだ。
『早く話して下さればもっとお助けできたものを‥‥!』と泣き付かれたのには参ったけど。

そこで、オレはニヤリと笑う。

「なんで求めてないか分かる?」

「はひ?」

「京子ちゃんのお兄さんと一緒だよ」

「花?」

「そう、黒川。獄寺くんもねー、居るんだよ、そーいう人ぉー♪」

目を白黒させるハルに、ニヤニヤ笑いが抑えらんない!
きっと自分の知らない獄寺くんが意外なんだろうな。
ハルの中で、しっかり独占欲があるんだ。

「あらぁ、ツナちゃん、今バラしちゃっても良いの?」

「えー、ダメかなぁ?」

「ダメよ、ツナ。本人は勘違いだって認めないんだもの」

したり顔のオレ達に、京子ちゃんとクロームはああ、という顔をした。

「ルッスーリアさんとビアンキさんも知ってるってことは、私達の親しい人なのよね?」

「――私、判ったわ」

「ええっ、クロームちゃん、判ったんですか?!」

「すごく‥‥簡単だわ」

にこりと微かに笑うクロームに、京子ちゃんもやっぱりと頷く。

「じゃあさ、ハル。今ハルには好きな人、いないの?」

「ツ、ツナさん?!」

ハル以外の全員が全員、笑いながら目を見交わす。

「今なら皆、協力してあげるわ」

「そォよー。牽制もできるわヨ」

「け、牽制って‥‥‥」

「意中の人に、他の女の人を寄せ付けなくさせるの‥‥」

「行動パターンとして、クロームに協力して貰うのが一番頼りになりそうだしな!」

「ミモザの日だもの。女同士、結託しましょ」

「ハーイ、オレ、賛成!」

「ボスも賛成だもの。私も」

「ワタシも協力するわよー!」

「良かったね、ハルちゃん」

ここへ、用事でいなかったマーモンが参加した。

「ム、何の話だい?」

「待ってたよマーモン、ハルの恋を応援しようって」

「――ああ、ボンゴレの嵐の守護者のことかい?」

あっ、マーモン、言っちゃった。

「キャーッ!! マーモンちゃんったらマーモンちゃんったら、何てことをおっしゃるんですか!」

「ム、ホントのことだろう?」

可愛い顔をフードの奥深くに隠しちゃってるこの子は、情操面が足りないよね。(アルコバレーノはずっと年上だってのは別問題)
オレとしては、自分が着せ替え人形になるよりも、真っ黒なマントに真っ黒なヴァリアーの隊服しか着ないこの子を着飾らせたい。

「あーあ、マーモン、本人から聞き出すのが良いのに‥‥‥」

「協力するけど、報酬は貰うよ」

マーモンの口癖のような要求に苦笑いするしかなく、割安にしてねとだけ言っとく。

まとまりそうな話に慌てるハルだったけど、マーモンに「君達がまだくっついてないのが不思議だよ」と言われると、ソファからずり落ちてちっちゃくなってしまった。

「観光とか遊びに行く時は、必ず獄寺くんを付けてるのにねぇ」

「山本武とばかり喋るのよ」

「じゃあ、次からは獄寺くんと2人にしてあげなきゃね」

「きゃーきゃーきゃーッ! 皆さん、何をおっしゃるんですかー!! ハルは獄寺さんのことなんて獄寺さんのことなんて!!」

「好きじゃない?」

どー見てもハルは獄寺くんを、獄寺くんはハルを意識してるのになあ。

「ハルが獄寺くんを好きになってくれると嬉しいなって思うのは、オレだけ?」

「私は京子でも良いわよ」

「獄寺くんに、家庭とか暖かいものをあげられるの、ハルしかいないと思ってたけど、京子ちゃんも当てはまるもんなー」

ハルをハメる為だと理解してる京子ちゃんは、にこにこといつものように微笑んでいる。
焦っちゃって気の回らないハルが「ダメです!」と叫んじゃうと、得たり、と一同がほくそ笑んだ。

「どうして? ハル」

「獄寺さんのヒネクレっぷりは筋金入りなんです! ハルくらいじゃないとダメなんです!!」

ぐっと拳を握り締めて立ち上がるハルに、皆が皆噴き出し、自分の台詞に気付いたハルの顔がかーッと赤くなる。

ひとしきり皆で爆笑した後、笑い涙を拭いてハルを抱き締める。
ランボやイーピンを可愛いがるノリが、こんな時ついカオを出してくる。
男だったら間違いなく警戒されてら。

「獄寺くんのこと、頼むね。獄寺くん、ハルと言い合いする度に落ち込んでミスするんだから!」

女一同、一致団結!


――で、終われば、何の問題も無かったんだ。


2010.03.14
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