ひどい刺激臭が全身を覆う。

その地下通路を流れる中央の水には汚水が溢れ、長年にわたって腐敗した汚物がヘドロのごとくへばり付き、得体の知れないガスを湧かせていた。

それらの腐臭とともに、ごまかしようのない血の腐った臭い。

正方形に近い部屋に入ると、十畳程の広さの真ん中にベッドがある。
周囲のコンクリートの床は何度も血を吸い、黒ずんだ染みが一面に広がっており、その上に新たな血溜まりといくつもの骸が覆っていた。

一際凄惨な有様だったのはベッドの上だ。

そこには頭蓋を割られ、半分取れかかっている首から血を啜る若い女がいた。


わたしは彼女の気が済むまでその場で待つ。

割れた頭蓋を更に噛み砕き、咀嚼する音が室内に響く。


血にまみれた白い裸体。

黒かった髪は真っ白で、白銀に近いだろう。
その白銀にも血がこびり付き、所々黒く変色しかかっていた。



やがて、彼女の"食事"が済んだ。

わたしは彼女に呼びかける。

ようやく、彼女はわたしを見る。
ようやく、彼女はわたしを見て微笑んでくれる。

憎らしくて、愛しい彼女―――







「夏美」

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