ごとん、と靴が落ちる。
やわいところを嘗められ足を引き攣らせてしまい、押さえられない程顔が熱くなる。

「えっち」

恥ずかしさを抑えて体勢を元に戻し、再びカカシ先生にくっつく。

「サクラに言われたくないな。どこで覚えたの? その指使い」

勃っちゃったじゃない、と耳に吹き込まれ、ぞわりと背筋が震える。
そのまま口吻けられそうな口唇を避け頬に軽くキスをし、内緒、と囁いて耳たぶを甘噛みする。
少し体を引いたのをいいことに、足元に膝立つと、ゆるい脚衣の奥に、突っ張ってるものとくたりと横たわるものが見える。

任務や昼間はしっかりとした布に押さえ付けられてるそれ、このあとは寝るだけだから構わないけど‥‥
むにょんと横たわるそれに、なんだかなぁ、と思わないでもない。
私がぴったりと押さえ付けられて荒ぶってるそれが好きだから、てのもあるんだけれど。
その情けない様も愛しいと感じるのは、それこそなんだかなぁよね。

帰宅時、出窓に置きっぱなしだったクナイを引き寄せて、心の中でごめんねと謝りながら足の筒布を引き裂くと、日に焼けてない白い足が露(あらわ)になる。

「すべすべなだけじゃなくて、筋肉も綺麗だなんて」

嫉妬しちゃう‥‥と、内腿の真ん中を甘噛みする。
下着も一緒に裂いていくと、残骸が張り出す勢いに負けて落ちた。

「脚を撫でてただけなのに‥‥大きくなっちゃったのね」

内腿の15センチからギリギリまでをゆっくり吮(ねぶ)りながら、もう一方の内腿を爪の背で僅かに行きつ戻りつしていくと、カカシ先生の腰が競り上がる。
それはまさしく刺激を強請るもの。
無表情を装うとしてるけど、目が裏切ってるわ。
まるで別人のように息づく自分の劣情を見つめて、私に触ってほしいと呼びかけてるの。

「サ‥‥クラ、っ」

漏れ出た呼びかけを無視して内腿のやわい皮膚を軽く噛む。
出窓の縁を握り締める腕が筋張って、カカシ先生が劣情を堪えてるのがよくわかる。
顰る眉と荒く呼気を吐き出す、薄く開いた口唇。
欲情して強請るカカシ先生って、ホントやらしい。

その口唇に誘われて、身体を伸ばして挟むようにキスを贈り、双袋をそうっと掌で包むと、呻き声と共にむしゃぶりつかれた。

「サクラ‥‥サクラ‥‥ッ、早く‥‥!」

食べられるかと思った。

口唇を貪られると同じくして頭をがっちり抱えられて、くちという“クチ”全部かぶりつかれた。
むしゃぶりつかれた“クチ”は逃げ場がなくて、獣みたいに貪るカカシ先生に煽られた私の呼気は溜まるばかりで、ちょっと、――キツい。

なんとかして快感を得ようと縋る腰の動きが最大に私を煽って、それがカカシ先生から煽られてるのか、私が煽った結果なのか、曖昧で‥‥もはや、どちらの熱が高いのか、私にはわからなかった。
引きずられて一緒に快楽へとなだれ込みたい気持ちを押さえ付けて、口唇を離した。

「せっかちね」

「‥‥今日の、っ‥‥サクラは、随分意地悪だね」

「だって、いつもは先生に意地悪されてるのは私だもの。たまには、意地悪、されて?」

「普段サクラに‥‥、ン。負けっぱなしなのに、意地悪もされちゃうの?」

そんなにオレの脚、気持ち良い? と息切れつつ顔を歪ませるけど、それは留め置かれた快楽で切羽詰まってるから、というのは手に取るようにわかり切ってる。
このままでは、少しの油断でカカシ先生に主導権を握り返されてしまうだろう。

それは今日の私の願うところじゃないから、今まで散々焦らしてたそこへ近づくべく、跪づいた。

ごくり、とカカシ先生が息を呑む音が聞こえ、喉仏が上下する。

期待、してるでしょう。
私も、これ以上焦らして、焦らした後の満足感を保障できないから、
カカシ先生の顔を見上げながら、下から上へ舐め上げる“真似”をし、頂点を軽く口吻けた。

「ふァ‥‥ッ」

触れるか触れないかのギリギリを吸い付いた私の意地悪に、最大に応えてくれたカカシ先生はホントに、本当に可愛かった。

その反応で良く、出さなかったと思う。

カカシ先生のギリギリさは感じ取ってたから、この初慟を逃がすのは吝(やぶさ)かじゃない。
やり過ごした後に、堕おとしてあげる。
カカシ先生の呼吸が落ち着くのを見計らって、全体を包み、口と指それぞれをゆっくり滑らす。
先から付け根、袋を含んで転がし、裏を擽る。
往復して吮り、口の中へ迎え入れ上下に転がす。
たまに双袋を可愛がり、会陰を揉みほぐし、喉頭も使って吸い上げると、私の頭をまさぐっていたカカシ先生がやんわりと押し退けようとした。

「離して‥‥サクラ、出ちゃうから」

ダぁメ。
口も両手も塞がってるから返事は心の中。
顔を見上げることもしなかったからカカシ先生がどんな顔をしているかもわからないけど、お腹や太腿の筋肉の動きで、カカシ先生が切羽詰まってることだけは解る。
幹に張り出す血管や、膨れ上がる傘、収縮を繰り返す双袋。
苦味を増す咥内。
熱く息づく躰。

それらがカカシ先生の弾けそうな官能を、正しく教えてくれる。

「だ、め、だから‥‥っ、サクラ、離せ‥‥ッ」

いつしか押し退けようとしていた手は、私の動きを助けるように、縋るように髪の毛を掻き回す。

「サクラ‥‥ッ!」

快楽に縋る手と、快楽に引く腰。
ダメよ逃がさない。

「っア、‥‥ッ」

いちばんやわいとこに軽く歯を立て吸い上げ、揉みほぐしていた会陰を押し上げながら双袋を掌で押し潰してあげた。

弾けた劣情は勢い良く咥内を満たし熱く震えている。

残らず吸い出し口を離すと、それは若干力を失っていた。

「‥‥飲んじゃった?」

先生の長い指で顎を攫われ顔を上げると、親指で口唇を拭われた。

鼻につく、飲み下しにくいどろりとした液体を咥内の奥へ押しやり、汗ばんで紅潮してるカカシ先生へ笑いかける。
快楽を弾けさせた後のカカシ先生は、隙のないいつもの気配が也をひそめ、ぼんやりとしてとても愛らしい生き物になる。

立ち上がってカカシ先生の頬を両手で挟むと、自然、カカシ先生の顔も上がる。
口の端を綻ばせたまま口唇を合わせると、カカシ先生も私の口唇を小さく吸ってくれた。
そのまま口唇で愛撫するように啄み、息継ぎに軽く口唇を開いたところで舌先を割り込ませる。
頭の付け根を引き寄せ口を開かせると、咥内の奥へ押しやっていた液体を邪魔されないように舌でカカシ先生の舌を押さえて一気に流し込んだ。

痺れるように熱かったそれは既に私の体温と馴染んでいて、私には液体が移動したとしか感じなかったけど、カカシ先生には堪ったもんじゃないだろう。
がっちり挟んで掴んでる私の手を解こうと手首を掴まれるけど、いつもならまだしも、今のカカシ先生は多少力が抜けてるし、判断力も下がってる。
そのうち私の譲らない意思も感じ取り、ゆっくり私に腕を絡め、引き寄せてくれた。

私達の間にあった液体はお互いを行きつ戻りつしながら、ようやくカカシ先生が嚥下した。

私からこういうことをしたのは初めてで、たまらない高揚感が私の裡を駆け巡る。

「‥‥まっずぅ‥‥」

口唇を離した途端、舌を出して顔を顰てみせた。
その表情(カオ)が面白くて、可愛くて。
飛び出た舌を軽く吸った。

「‥‥オレ、いつもこんなん飲ませてたの?」

「そぉよー。‥‥でも、カカシ先生が私に飲ませるワケ、ちょっとわかっちゃったかも」

いつもなんともいえない味と喉越しに、機嫌が良くない時なんか殺意すら沸いてたけど。

‥‥すっごく自尊心を満足させるわ。

征服欲っていうのかしら。
嫌がる顔が可愛いだなんて、私もすっかりカカシ先生に染まってるわね。

「これからは、自重します‥‥」

カカシ先生のがっくり具合に、吹き出してしまう。

喉の奥で笑いながら口唇を啄むと、首の後ろに手を宛がわれ、口吻けが深くなっていく。
もう片方の手が腰に添えられ、そのまま引き寄せられた。
ぴたりと身体をくっつけ、押し付けるようにくっついた身体全部でその先を望まれる。

だから、ね。
カカシ先生。

息継ぎで少し離れたタイミングでくっついてた身体の間に手を入れ、カカシ先生の胸を押した。

「サクラ?」

「明日、早いの。お風呂入らなきゃ」

「え」

「綱手さまと早朝修行の約束があるのよ。えっちしちゃうと、せっかく修行をつけて下さるのに、動けないでしょう?」

「え、サクラ、」

性欲が高まった時の熱が、一人の時と二人の時、それぞれの終着点が違うのは良く解ってる。
一人の時はそれなりに折り合いが付くそれは、二人だと欲望の切り捨てが上手くいかないのだ。
高めた熱を惜しむように、それこそ混ざり合って、溶け合うまで。

ただし、片方が強固な意思を貫く場合は異なる。
今回、その“強固な意思”を貫くのは私。

「お風呂、行ってきまぁす」

ほっぺにちゅっと軽く唇を押し付けて、お風呂場へ向かった。

「そりゃないよー」とか「聞いてない」だのはまだしも、「サクラちゃんを可愛がろうとしたオレのこの滾りはどーすりゃいいの」だとか「えっちさせて下さいサクラさん」「ずこずこしたいです」だなんて下品なことを言い出したり、「アナタのアイを必要としてる下僕がここに1体落ちてますよー」とそんな関係性になったことないでしょうな呼びかけ、仕舞いには「見捨てないでサクラちゃぁぁあん!!」って、カカシ先生、それは情けなすぎよ。
そして面白すぎるわ。

多少の意地悪があったことは認めるわ。
だって、カカシ先生の不思議で淫靡な恰好を他の人が見るだなんて、癪だったのよ。
私が言うわがままに、余裕で私を甘やかせてくれるカカシ先生はやっぱり大人で。
その余裕の愛に試すように挑んで、先生があっさり負ける様を私は愉しんでるの。
情けないもの言いも、私を愛してるとしか聞こえない。
(どうしようもない)愛を叫んでくれたカカシ先生へのお礼は、やっぱり今日の続きよね。
今日切り捨てた熱以上の演出を考えながら燻っている残骸を流し、温かいお湯に身を委ねた。


カカシ先生の愛の囀りは、まだ続いている。



end
2011.08.25
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