〔3〕
空港まで迎えにいって驚いた。
女の子がいた。
びっくりだ。
師匠が女の子になっていた。
以前「荷物持つぞ」と申し出たら「なんで弟子に荷物持ってもらわなきゃいけねーんだ」といってぶっとばされたが、今回は何故か大人しく荷物を渡してくれた。
おお。びっくりだ。
家に行こうかといったら、後ろをちょこちょことついてきた。
なんだろう。ああ、ヒールのある靴を履いているのか。おお、やっぱり女の子になっている。
帰路につく間、そんなところばかりが気になって仕方なかった。
「師匠、飯くってくか」
間が持たず、そんなことを言ってみる。師匠はきょとんとした。
「京子が作って待っててくれんじゃねーのかコラ」
「あ? ……ああ、そうだな。やっぱり帰るか」
師匠は左手首に光る時計に視線を落とす。その仕草もなんだか女の子っぽいな。
「どっちにしろ飯食う時間でもねーぞ」
「あー、そう、だな。じゃあ帰るか」
なんだ。うまくいかん。ばりばりと頭をかく。
以前はこんなでもなかったんだがな。いや、俺は変わってない。
変わったのは師匠だ。うむ。
女の子っぽくなった。
以前は男だか女だかよくわからなかったが(こんなこと言ったら京子におこられそうだが)、今はちゃんと女の子だ。
なんだか、もっとじっくり見てみたい気がする。それがなぜかはしらん。
思い立ったが吉日とばかりに、ぐるりと振り返る。
「わっ……!」
「師匠?」
師匠がびくりと肩を強張らせる。
「……どうした?」
その肩に触れ、顔を近づけた。
長い金色の睫が震えている。碧眼も、闇夜に染まって同じ色になっている。
「師匠?」
「……っ、う……うるせーぞコラ!もういい!ケース返せ!」
「ししょ……ぎゃあ!」
身構える暇もなく、鳩尾に膝蹴りが入る。おお、さすが師匠。臓腑が全部出そうだ。
体勢を立て直すこともできないまま、項に手刀を食らう。さすが師匠。三半規管がいかれそうだ。
顔を上げる前に、師匠が走り去っていく気配がする。
うーむ。女の子はよくわからない。
助けて京子。
(終)
aiuolaの辻アコ様に、2008年年末企画にリクエストを致しましたREBORN!“了コロ♀”です。
サイトを閉鎖されてしまうにあたり、掲載許可を打診したところ、快く応じてくださいました!ありがとうございます!!
Special Thanks
aiuola
辻アコ様
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