鈴蘭の君 | ナノ


「よし、今日の授業はここまで」


先生がチョークを置いた瞬間、タイミングよくチャイムが鳴り響いた。つまり、昼休みの開始というわけだ。


「桜、今日弁当?」


教室がざわざわし始めると、斜め前の席のリュウジが振り向いてきた。


「や、違うよ。リュウジは?」
「俺もー。食堂行こうよ」


こうして、私はリュウジと連れだって食堂へ向かったのだが、着いてみると人、人、人。私達は若干出遅れてしまったみたいで、カウンター前にはすでに長蛇の列ができていた。


「これは……」
「相当時間掛かりそうだね……」


空腹感と目の前の現実に一瞬くらっとしたが、つっ立っていてもどうしようもないので大人しく最後尾に並んだ。


「リュウジは何食べるの?」
「うーん、今日はカレーにしようかな」
「私は日替わり定食ね」


すると、リュウジは少し呆れたように笑った。


「また?桜いっつもそれだよね」
「好きだからいいの!それに“日替わり”だから毎日メインは違うもん」
「そんなもんかなー」
「特にお味噌汁が、食堂のおばちゃんの愛がたっぷり入ってて絶品だよ」
「それじゃあ、俺の愛がたっぷり込められたクッキー受け取ってよ」
「……出たな変態」


いつの間に忍び寄ったのか、私の後ろにはヒロトが出現していた。本当にこいつは神出鬼没だ。もし同じクラスだったら、と思うとぞっとしない。


「あ、ヒロト。やっほー」
「やあ2人共。んー、朝ぶりかな?」


いきなり(そしてむりやり)会話に乱入してきたヒロトは、私に何やら可愛くラッピングされた袋を押し付けてきた。


「何これ?」
「クッキーだよ。家庭科実習で作ったから、桜にあげようと思って」


リュウジが私の手元を覗き込んで、おぉ、と小さく感嘆の声を漏らした。


「すごっ。これラッピングどうしたの?」
「クラスの女子に教わった。せっかく桜にあげるんだから、可愛い方がいいでしょ?」


頑張ったんだよーと胸を張るヒロト。お前は女子か。


「まあ、クッキーに罪はないし、一応もらっとく。ありがと」


わーい。クッキー1袋ゲットだぜ!





130831

意外と長くなってしまいました…。今回は緑川との絡みが多かったです。
食堂でのやりとりはもうちょい続きます。






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