短編 | ナノ


今日は花火大会だ。年に一度のことなので、会場近くは出店がいっぱい。人もいっぱい。家族で花火を観るつもりだったみたいだけど、なんとなく、約束があるからと嘘をついて1人で来た。


「…帰りたいなあ」


口に出して呟いた。大丈夫、今日は賑やかだから少々独り言を言ってもバレない。
お祭りは嫌いじゃないけど、辺りを見回しても私の好きな空気は無い。良く言えばアバンギャルドな、悪く言えばちょっと頭おかしい服と化粧の女の人たちや、深夜のコンビニ前にしゃがんでそうな男の人たち。あと、リア充。そんなんばっかが目について、私の気分は最悪だ。
夕飯時をしっかり教えてくれているお腹をさすりながら、人がいなさそうなとこを目指して歩く。


「とりあえず、リア充爆ぜろ。そして残りも爆発しろ」


ブツブツと恨み言を言いながら下を向いて歩く私は、ひどく陰鬱なオーラを纏っていたと思う。


「あれ、四ノ宮?」
「…?」


誰かに呼ばれた…?振り返ってみたけど、知った顔はない。気のせいか。


「四ノ宮!」


がしっ、と腕を掴まれた。もう一度振り返ってみると、今度は知ってる人がいた。ピンクの髪を2つに結んでいる、中性的で整った顔立ちをした人。


「えっと……霧野、くん?」
「ああ。ってか、一応クラスメイトなんだし、自信なさげに言うなよな」
「ああ、ごめん」
「それにしても偶然だなー、四ノ宮は1人で来たのか?」
「え?うんまあ…」


なんで私に声かけたんだろうこの人。確かにクラスメイトだけど…1回も話したこと無かったし、大体、こっちは女子生徒Aで、むこうはモテモテイケメンくんだよ?住んでる世界が違う。


「ってことで、行こう!」
「は?」


やばい話聞いてなかった、どうなってんの?なんで私学園のアイドルに連行されてるの?


「おい、神童。四ノ宮見つけたぞ」
「ん、霧野。どこ行ってたんだ?って、四ノ宮さんんんっ!?」
「…こんにちは」


アイドルがもう1人増えた…。容姿端麗、成績優秀、運動もできてお金持ちというあほみたいなステータスを持ってる神童くんは、何故か私を見るなりずざざざざっと後ずさった。私何か悪いことした?心象悪いんだけど…。


「よーし、じゃあ行くか」
「え、私も?」
「当たり前だ。折角会ったんだから一緒に回ろうぜ」
「でも、私がいない方が…」
「んなわけ無いだろ。なっ、神童」
「あ、ああ」


本当かなあ…神童くんめちゃくちゃぎこちないけど…。あ、視線があった。…一瞬で逸らされたぜこんにゃろう。でも、1人じゃないって…久々だな。


「あー、じゃあ、お言葉に甘えて…」


その夜、誰かと一緒にいるってことがどんなに楽しいかを、私は確かに思い出した。





140802

結局何が書きたかったのか…






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