夜になると辺りはクリスマス一色で、キラキラとイルミネーションが輝く季節。周りの人間もカップルであははうふふな空気が増えてきてもうなんて言うか爆発すれば良いのに。
「さむいー…」
教室の中なのにも関わらず暖房が全く効いていないのか息が白くなるぐらいには寒い。巻いていたマフラーをぐっと口元まで引き寄せる。マフラーのわりにちゃっちぃこのマフラー。気持ちあったかい。気持ち。
「あー…新しいマフラー欲しいなぁ」
マフラー、いや、最近はスヌードの方が欲しかったりする。あのもこもこした感じが好きなのと、いちいち巻く手間が省けて良い。そういえばなんかヌードルとスヌードって似てるよな。なんでも良いけどスヌード欲しい。
「ヌードル欲しい…」
あー、さみぃ!まだこれで12月だっていうなら一体真冬はどうなるんだ。凍え死ぬのか、俺は凍え死ぬのだろうか。死ぬぐらいなら冬眠したい。
机にぐたりと俯せになるとガタリと前のせきが動く気配を感じる。ちなみに前の席は紫原っちである。お財布を持っていたところを見るとどうやら購買に行ったらしい。とりあえずスヌード欲しい。
「……」
イスに凭れぼーっとして数分。コトリと机の上に置かれたカップヌードル。なんだこれは。
「え、なに、ん?ちょ、紫原っち…?なにこれ」
「よい、何も言うでない」
「え?」
哀れみと使命を果たした解放感溢れる表情を携えてグッと親指を立て爽やかに去っていった紫原っち。何事なの。なんでカップヌードル?今別に求めてないんだけど彼は一体どうしたの?
「なに?なに?ちょっと紫原っち、これなに?」
「そんなにひもじいとは思わなかったよ…黄瀬ちん、俺にはそんくらいしかできないけど。他に欲しいものあったら言って、出来ることなら俺、俺…」
「なんで泣きそうなの?つーかなんでカップヌードル?俺別に…」
俺が欲しいのはスヌードであってヌードルでは……。…ん?そういえば俺さっき何て言ったっけ。
「あっ、恥ずかしい死のう」