轟くんと入れ替わるいつもと同じ帰り道、私はやりたいことがあって急いで帰りたくて足を急がせていた。
確認することなく角を曲がればそこには男の子がいて、その少年と正面衝突した。そう確かにした。
「いてぇ…」
「ごめんね、だいじょ…、ばない!!!!!!」
思わず叫びたくなる出来事だった。
私は確かに少年とぶつかったのだ、そう少年と。
なのに目の前にいるのは女。
というか私なのだ。こんな漫画みたいな展開ありえるのだろうか、いやありえるから起こっているのか。
名前は頭を抱える。
「なんでおれが2人いるんだ?」
「ちがう、違うよ少年!」
「?」
首を傾げる轟に名前は自分のバックから鏡を取り出し、少年に見せる。
「お」
「反応うすっ!!」
いま君と私入れ替わっちゃってるんだよ!!もっと焦ろう!?と名前が言うとこれでも驚いてる、とあまり驚いてなさそうに言われる。
「あー、どうしよ、なにこれ」
「帰りてぇ」
「マイペースだな、君!!」
その姿で自分の家に帰ろうとしないで、お願いだから!!となんとから引き止める。
「私、一人暮らしだしとりあえずうちに行こ…」
君の親御さんに説明を、というと明らかに嫌そうな顔をする私の中の彼。
「ねえ、そういえば名前、聞いてなかったね」
「轟焦凍だ」
「轟くんね、私は名字名前」
とにかく説明しないことには始まらないから電話しよ、と轟に言えば姉でもいいかと聞いてくるので頷き、電話をかけてもらう。
「姉さんか?」
『…どちら様?』
「轟くん!いま私の体だから!!声違うから!!」
「忘れてた」
「ちょ、変わって!」
轟から携帯を奪い、轟の姉である冬美と名前は話しをする。
自分の不注意で彼にぶつかったこと、それがきっかけで中身が入れ替わるという不思議なことが起こったこと。
「信じられないかと思うのですが、この姿で帰るわけに行かないので。弟さんを預からせて頂きたいのですが」
『…わかりました、父には私から説明しておきます』
「ありがとうございます!」
『名前さん、焦凍のことよろしくお願いします』
「はい」
プツリと電話を切り、轟に目を向ける。
「お姉さんには説明したから」
「ああ、ありがとう」
じゃあ行こうか、と名前と轟は歩き出す。
数分後、アパートにたどり着くと名前は轟が持つ自分の鞄から鍵を取り出し、部屋を開ける。
「狭いところだけど、どうぞ」
「おじゃまします」
轟を部屋にいれ、適当に座らせてから名前はお茶を出し自分は轟の前に座る。
「どうしようか…」
「もう一回ぶつかれば戻るんじゃねぇか?」
「…や、やるか」
2人は立ち上がり、お互い微妙な距離をとる。
「いくよ、轟くん」
「こい」
ゴンっと鈍い音をたて、ふたりの額がぶつかった。
痛い、と呻く名前と無表情だが額を擦る轟。
そうしながらも戻ったかとお互いを見る。
「そんな簡単にはいかないよねぇ…」
「いかなかったな…」
結局、轟はこのまま名前の家に泊まることになった。
ドキドキ、お風呂イベントをこなし(お互い目隠しして、自分で洗った)諦めて寝ようとした時、気がついた。
我が家には布団が一つしかないということに。
「というわけで、どうぞ、轟くん」
「大丈夫だ」
「よくない、お客様を床に寝かせるなんて…」
「気にしねえ」
いやいや、とお互い引かない2人。
名前は何を血迷ったか名案だと言わんばかりに言う。
「勝った方が布団ね、あいこだったら一緒に寝よう」
それに対して轟もわかった、と言い2人は手を出す。
「最初はグー」
じゃんけんぽん!と出した手は2人ともチョキ。
「…よし、寝よう…」
「ああ、おやすみ」
こうして2人はそのまま狭い布団に2人みちみちと入りながら寝る体制に入る。
「体が違うからかな、全然ときめきないわ…」
「そうだな」
ふふっ、とお互い笑いそのまま眠りについた。
朝、目が覚めたら体はすっかり元通り、自分の体になっていた。
この貴重な体験は2度とないだろう、と名前は笑った。
後日、また入れ替わる日が来るとは。
いまの2人は知らない。
2016.7.31
轟くんと入れ替わる、でした!
轟くんと同級生にしようか、赤の他人にしようか悩んで他人にしました。
こういうハプニングから知り合って距離が縮まるのが好きだったので…!
リクエストありがとうございます!
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