轟くんが八百万を好きだと勘違い


私には好きな人がいます。
けれどその人には好きな人がいます。
両思いかって?もちろん答えはノー。その人の好きな人は同じクラスの八百万さんです。

同じ特待生ということもあるからか何となく距離が近いというか。
期末試験後から距離が縮んだ気がして。

臆病な私は、それを見ることしかできない。


「八百万、いいか?」

「どうしました轟さん」


二人が話す、その姿だけで胸が締め付けられるようなそんな感覚がして。
見えないように、聞こえないように名前は机に突っ伏した。

それを見ていた轟は、八百万にわりぃと言い名前に近づきとんとんと肩を叩く。名前は気がついてるが気まずくて黙ったまま。

「名字、大丈夫か?」

そう聞いてくる轟に軽く首を動かし大丈夫だと伝える。
しかし轟には大丈夫に見えなかった。

「…大丈夫じゃねぇだろ」

轟はぐいっと名前の腕を引いた。

「行くぞ」

そう言って轟は無理やり名前を立たせて教室の外へ出る。
名前は大丈夫だから、やだ、と言うがととは聞かずそのまま歩く。

「何が大丈夫なんだよ」

どう見たって大丈夫じゃねぇだろ、轟はそう言って名前を見た。名前はビクリと肩を震わせた。

彼とふたりきりは嬉しいけれど、それはこういう事じゃない。
クラスメイトとして心配してくれてるからで、だから。

そう思えば思うほど虚しくて悲しくて、我慢していたのに涙が溢れてきた。

「名字、泣いて…」

「優しくしないでよ…」

なんでそんなことするの、期待したくなっちゃう、やめて、と泣きながら言う名前。
廊下で誰かに見られるかもしれないのに涙がとまらない。名前は必死に手で目をおさえるがとまるはずなどなかった。

しかし、轟の行動でその涙はピタリと止まった。


「とど…ろき、くっ」

「お前こそ…、期待させんなよ…」

ギュッと名前を抱きしめる轟。
名前の涙は驚きで引っ込んでしまった。

「な、なに?やめて…」

引き離そうとするが、力でかなうはずもなく名前は轟の腕の中だ。


「俺は名字が好きだ」

私の聞き間違い?幻聴?
名前はおろおろしだすが、轟はそのまま続けた。

「好きなんだよ」

「わ、私」

嘘じゃない?私でいい?そんな思いで彼を見たら、八百万さんに向けた顔とまったく違う顔の彼がいた。



2017.7.2

雪乃様リクエストで轟くんが八百万好きだと勘違い、でした!
短くてすいません、切甘ってこんな感じなんでしょうか?
難しかったです。
リクエストありがとうございました!!




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