打ち抜かれた心臓
バキューン! と打ち抜く音が聞こえた気がした。
何を打ち抜くって? 私の心臓。そう心臓、ココロ、ハート!!!
打ち抜かれたの、あの人に。
いま話しかけなければ、2度と出会えないかもしれない私はすれ違った彼を追いかけるため、くるりと方向転換をした。
早歩きな彼を、逃がさないために。
私は走る、人混み?そんなもの気にしていられない。
人の間を無理矢理抜けて、伸ばしたその手は彼に届いた。
ぐいっと彼のシャツを引くと彼は立ち止まった。
「なんだよ」
彼の目に自分が写った、それだけで涙の心臓は大きく脈打つ。
「あ、あのさ!!!」
好きなんだけど!!! 初対面の相手に自己紹介もせず、間にすべきこと全てをすっ飛ばして涙は告白をした。
目の前の男ははぁ?と眉間にシワを寄せる。
「論外」
俺餓鬼嫌いなんだよね、と去ろうとする彼を無理矢理引き止める涙。
「お願いします!!せめて!!!」
チャンスをくださいいいいと離れない女に男はため息をついた。
「しつこいと…」
殺すと続けようとした彼に涙は物怖じすることなく、笑顔で言い放ったのだった。
2016.6.12