大好きな貴方へ
「弔くんが…、敵?」
「そうだよ」
ねえ、嫌いになった?と死柄木が聞くと涙はフルフルと首を横に振る。
「…弔くんのこと、嫌いになんか、なれない」
好きなの、と泣きながら言う彼女に俺もだよと死柄木は返す。こんな血なまぐさい空間で告白なんて、普通ではありえない。一生忘れることが出来ないだろうなと死柄木は笑う。
「ねえ涙。俺のとこきなよ」
父親のことなんてどうでもいいだろ?そう言えば涙はこくりと小さく頷く。
血まみれになった彼女は泣きながら死柄木にギュッと抱きつく。それを死柄木は指がすべてふれないように、だが強く強く抱きしめる。
「じゃあ行こっか」
黒霧行くぞ、と声をかければ忘れられてるのかと思いましたよと黒霧はため息をつく。
「はじめまして、黒霧と申します」
「涙です…」
ごめんなさい、こんな格好でと言う彼女に黒霧は構いませんよと返す。
「帰ったら風呂だな」
「そ、だね。汚いもんね…」
そして3人は黒霧の個性で移動をする。
着いたいつものバー。涙はキョロキョロ周りを見渡す。
「中は後でゆっくり見なよ」
とりあえず風呂ね、こっちと死柄木は涙の手を引き案内する。
「ほら入んなよ」
「わかった…」
死柄木は1度脱衣場から出て、彼女が浴室に入るのを待つ。
少し待てばシャワーの音が聞こえはじめたので、死柄木は扉をあけ、浴室につながる扉に背を預け涙に話しかける。
「きこえる?」
「弔くん…、どうしたの?」
「このまま話そっか」
「うん」
死柄木はポツリと話し始める。
はじめて出会った時は変な女だと思った。自分なんかに一目惚れなんてありえない、何が目的なんだと疑った。けれどそういうことなんて一切考えてなくて、ただ純粋に自分を好きだと言う涙に惹かれた。気がついたら涙を好きになっていたと言う。
「だからさ、責任とってよ」
「弔、くっ」
「俺のそばにいて」
涙はガチャリと扉をあける。背を預けていた死柄木は倒れそうになる死柄木の後ろから涙がびしょびしょのまま抱きついてきた。
「そばにいたい。いさせて…」
会ったときからずっと、弔くんが大好きなの。
涙がそう言うと知ってるよ、なんて死柄木は返す。
「俺もさ」
大好きだよ、なんて言えば涙はまた泣いた。
大好きな貴方へ。 たとえ貴方がどんな存在だろうと、私は貴方とずっと一緒にいるよ。
貴方が生きている限り、ずっと。
2016.6.19 完結