06



「轟くんの下の名前ってさ、焦凍くんだよね?」

奏の突然の一言に轟はきょとんとした顔で返事をした。

「そうだけど、なんだよいきなり」

「いや、確認…??」

「確認する必要あるか、それ」

もっともすぎるその意見に奏はへにゃり、と笑いながらぶっちゃけないと答える。
それに轟は呆れた顔をする。

「ないのかよ」

「ごめん、あんま考えて話してないの…」

「だろうな」

奏は轟にそんなこと言われると思わなくて、わーと悲しいような嬉しいような複雑な顔をしている。

「やばい、まだ轟くんと仲良くなってからそんな経ってないのにもうそう思われてるんだ…。なんていうか、私のこと理解されてる感じ…?」

そう言えば轟は驚いたような顔をしてえ?と言う。それに対して奏は焦る。

「ん?なにそれ。何に対するえ?なの!?」

変なこと言ったかな?と聞く奏に轟は首をかしげながら言う。

「俺たち仲良かったのか…?」

それを聞いた奏はわたわたとしながら。

「そこ!?仲良くなかった!?なんかごめん!」

1人で舞い上がって馬鹿みたいだ、なんて顔を赤くする奏。この前自分から誘ったとはいえ、遊んだから仲いい部類に入ると思っていたのだ。

「いや、なんか、わりぃ」

「謝んないでいいよ…」

2人の間に微妙な空気が流れる。
その空気に耐えれず、沈黙が続く。

そんな中轟が口を開く。

「その、今まで親しいやついなかったから…、よくわかんなくて」

「無理しないでいいよ、轟くん!」

余計に悲しくなるからやめて!と奏が言うと轟は違うんだ、と否定する。

「無理じゃなくて、その嬉しかった…」

頬を緩ませ言う轟に奏はきょとんとした顔で、そうなの?と聞き返す。

「ああ」

「そ、そっか」

良かった、なんて思わず奏も頬を緩ませへにゃりと笑う。
そんな奏に轟は言う。

「だから、その。名前でいい」

「え?」

「焦凍で、いい」

友達じゃないのか?と言う轟に嬉しそうに奏は頷いた。

「っ、わかった!」

「有里のことも、奏って呼んでいいか?」

轟が聞くと奏はやったーと喜びむしろ嬉しいよ、言う。
改めてよろしくな、なんて轟は今まで見せたことない顔で笑うのだった。



2016.6.9

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