1周年記念! | ナノ
この一撃をくらえよ、ハニー
イエス・キリストの誕生を祝う日でもあるクリスマスになれば街中が赤と緑に染まり、キラキラと光り輝くイルミネーションに照らされる。
それに今日のような雪がプラスされればホワイト・クリスマスと呼ばれて恋人たちにとっては一大イベントにもなるのは物心ついたときから分かっていた(私の父が母にプロポーズしたときがまさにその日だった、と聞いたのもあるけれど)。
だから少しだけ、本当に少しだけ期待していた。ーーそれなのに、私の少し後ろを歩く幼馴染はやっぱりいつもと同じだった。
「エア、ちょっとだけ飲んで帰らねぇか?」
『いけません。コナーが待ってるんだから急いで帰らなきゃ』
お菓子やお酒が入った紙袋を持つ彼、マーフィー・マクマナスことマーフは拗ねた子供のように唇を尖らせながら首元に巻かれているマフラーに顔を埋めた。
カトリック教徒である彼と彼の兄であるコナー・マクマナスと私の3人でクリスマスをお祝いするのは毎年のこと。
そして、荷物持ちとして一緒に来てくれるのはいつもマーフだった。
「たまには2人でクリスマスを過ごそうとか思わないのかよ…」
『それもいいと思うけど…、遅く帰って来たら殴るって言われてるんだよ?』
「俺はもうガキじゃねぇ!保護者か!」
fack!と叫ぶマーフに思わずクスクス笑ってしまうと、いきなり肩を抱き寄せられた。
「なぁ、エア。他の奴らみたいに恋人と過ごすクリスマス…ってやつを過ごそうぜ?」
耳元で響くリップ音に顔が真っ赤に染まる。
あたふたと慌てる私が面白いらしいマーフはケラケラと笑った。
『もう!意地悪するマーフにはクリスマスプレゼントあげないんだから!』
「お、おい!冗談だって!そんなに怒るなよ、エア!」
慌てるマーフに今度は私が笑い、2人で笑い合いながら真っ白な雪が舞う道を歩く。
そして、彼が歩幅を私に合わせると同時に彼の腕に自分の腕を絡ませて頭を預ける。
まるで恋人のように身を寄せ合った。
「エア」
『ん?』
「俺、たまにはお前と2人で1日を過ごしてみたい」
『コナーはどうするの?』
「あいつにはロッコやドクがいるだろ」
『妬いちゃうかも』
「……なぁ、いいだろ?」
チラリと見上げた先にある青い瞳を持つ彼にニッコリと微笑んだ。
『うん、いいよ。2人で一緒にご飯食べてお出かけしようね、マーフ』
その言葉を聞いた彼が一瞬だけ真剣な表情を浮かべた、と思うと共にマーフは荷物が潰れてしまうのも構わずに私を真正面から抱きしめた。
驚く私の耳元に少し低い声が響く。
「好きだ、エア」
ーー前言撤回。
今日のマーフはいつもと同じマーフじゃなかった。
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