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可憐な乙女座スピカ



AM 7:45、晴れ。そして今日は日曜日。
寝室を出てすぐのリビングにある小さめのテーブルに並べられていたのは、ホイップクリームがたっぷり乗ったパンケーキと甘くて濃厚そうなミルクティー。
寝起きのままだった私が思わず頬を抓りながらそれらを見ていると、聞こえてきた苦笑する声と共に背後から抱きしめられた。

「おはよう、エア」

耳元で響いたリップ音に羞恥心を感じながらも私を抱きしめる恋人の彼、G・カレンを見上げる。

『お、おはよう、カレン。あの…、これ、もしかしてカレンが準備してくれたの…?』
「俺以外誰がいるんだ?」

椅子に座るように促された私は彼の腕の中から椅子へと腰を下ろし、目の前にある素晴らしい朝食の香りを堪能する。
さっきまで二度寝しようかしまいか悩んでいた自分に脳内で説教をしていると、すぐ隣にカレンが座った。ーーわざわざ椅子を移動させて。

「さぁ、甘ったるい朝食を食おうぜ」
『……嫌な予感がしないでもないんだけど…』
「おい、俺を何だと思ってんだ。お前の為に作ったんだぞ?」

ナイフで切ったパンケーキにフォークでホイップクリームを乗せるカレンを見たら、彼の相棒であり私の友達でもあるサムはきっと大爆笑するだろう。
……否、下手をしたら写真を撮られて皆に笑われてしまうかもしれない。
そんなことを考えている私の口元に向けてズイッと差し出された美味しそうなパンケーキを見てからカレンを見ると、彼はただ笑っていた。私の大好きな笑顔を浮かべて。

「エア、美味いか?」

顔を真っ赤に染めて口をモグモグと動かしながらも美味しいパンケーキに大きく頷いた私に満足したカレンが自分もそれを口に運んだ、のだけれど。

「……」
『……甘過ぎた?』

思いっきり眉間に皺を寄せるカレンが何故か私をギロリと見ながら、立ち上がって冷蔵庫の中から取り出した紙パックの1.5リットルの牛乳にそのまま口をつける。
私にはちょうど良い甘さだったけれど、彼には予想以上に甘過ぎたらしい。

「ブラックに砂糖8杯も入れるエアなら食えるだろ、それ」

自分が作ったのに、と言いながらも私はカレンが作ってくれた甘過ぎるらしいパンケーキを食べ続けていく。
再び隣に腰を下ろしたカレンにふと呟いた。

『ねぇ、カレン。どうして朝食作ってくれたの?今日…何かあったっけ?』

牛乳を片手に持つ彼はしばらくしてからゆっくりと視線を反らし、本当にポツリと囁いた。

「別に何でもねぇよ。…ただ、エアの為に作りたかっただけだ」

牛乳を一気に飲み終えたカレンが立ち上がってそそくさとバスルームに向かっていく。
さっきまで余裕だったのに、と思いながら、今日のディナーは私がカレンの為に作ろうとまだ温かいミルクティーを手にした。





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