『カール、何してるの?』

洗濯物を洗い終えた私の視界が捉えたのは石に腰かけて何かをしているカールだった。
突然話しかけられてかなり驚いた彼は慌てて手元をガサガサと動かしながら私の方へと振り向いた。

「エア、び、びっくりした…」
『ご、ごめん、驚かせちゃったね』

ううん、と首を左右に振るカールの隣に腰かける私をチラチラと可愛らしく見上げてくる彼に微笑んだ。

『さ、カールくん。友達との間に隠し事はしないって約束…覚えているかな?』

ふふーん、と笑う私に諦めたかのようにカールは隠していた物を私に見せてくれた。
少しクシャクシャな紙に鉛筆で書かれているのは可愛らしい文字。
そんな文字の中で所々にある「Cute」や「love」を見た瞬間、私は顔を真っ赤に染めて小さく叫んだ。

『ラ、ラララ、ラブレターだ!ラブレターだぁあああ!』
「ち、違うよ!そんなんじゃないよ!ただの手紙だよ!」

私と同じように顔を真っ赤に染めたカールにラブレター(これがただの手紙だなんて認めません!)を私の手から奪い取る。
ラブレターなんて初めて見た私はドキドキしながらカールに言葉を紡いだ。

『ねぇねぇ、誰にあげるの?あ、もしかして…』

キャロルと一緒に水を飲んでいるソフィアをチラリと見ると、カールは首を左右に振ってNOを示した。

『え…、ま、まさか、年上の人?』

躊躇いながら小さく頷いたカールを見て思わず叫んだ。
顔を隠しながらキャー!と興奮する私は次々と仲間たちの中にいる年上の女性の名前を挙げるけど、当たることはなく。

『うーん、アンドレアでもないなら誰にあげ「さっきから2人でコソコソ何してるんだ?」きゃあ!』

突然肩を叩かれた私は驚きながらも慌ててラブレターを隠すようにカールに促した。
カールの大事な大事なラブレターを誰かに見せるなんてことはさせたくない。
ーーまぁ、私は見ちゃったけど。

「パパ!」
「カール、こんなところで一体何をしてるんだ?」

カールのパパであるリックが彼の頭を撫でる。
その表情は優しいお父さんの表情をしていて、何だか懐かしさを感じた。

「べ、別に何でもないよ。ねぇ、エア」
『う、うん!別に何も!2人で今日のディナーのメニューを考えてただけ!』

ねー、とカールと笑い合う。
それはそれはぎこちなく笑いながら。

「……カール、ママが探していたぞ」

しばらく黙っていたリックがそう言うとカールは素直に頷いて、あろうことか私を置いて行ってしまった。
振り向くぐらいなら助けてくれたっていいのに!

『……さ、さて、見回りにでも行って来ようかな…』

微妙なこの場から逃れるように立ち上がる私の腕を掴んだのは他でもないリックで、仕方なく座り直した。

「正直に言ってくれ、エア。また2人で森に行く計画でも立てていたのか?」
『ま、まさか!二度としないって約束したでしょ?』

一度だけ、リックやダリルたちには内緒でカールと2人で森に行った。
ウォーカーなんていないだろう、そう油断していた私たちの前に現れたウォーカーたち。
カールだけでも逃がさなくちゃと思っていた私を助けてくれたのは紛れもないリックで、それから私たちは皆からお説教を受けてーー。
ダリルには直接〈身体〉に刻み込まれた。
羞恥で顔が赤く染まる私を見てリックは小さく苦笑した。

「そうじゃないならいいんだ。…だが、もう一度だけ言っておく。もう二度と、あんなことはしないでくれ、エア。いいな?」

私の肩に手を置いて切なそうに囁くリックに思わず胸が高鳴る。

まるで天使のようだ、と思わず呟いた私を見て、リックが爆笑するなんて分からずに。







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