「ね、ねぇ、エア」
『何?』
「いつも思うけど、何で僕の前で普通に着替えるの?」

ベッドに座りながらコントローラーを弄る僕が小さく囁くと、彼女ーーエア・コルトハーツはキョトンと首を傾げた。
僕の幼馴染である彼女の姿はまさに一言、下着姿だ。
小さい頃は一緒に風呂に入ったりとか裸でプールに入ったりとかしたけど、今は違う。
テレビ画面に浮かぶ敵を倒しながらもチラチラとエアを見る。
真っ白な肌と豊満な胸、そしてプルプルに潤っている唇ーー。
どうにかなりそうな僕は激しく首を左右に振った。

『ご、ごめんね、嫌だったよね』
「え、あ、い、いや!そ、そうじゃないんだ!えっと、その…」

ゲームオーバー、と画面に浮かぶ文字と言葉にならない気持ちに思わず頭を抱えると、エアは素早く僕と一緒に買いに行ったワンピースを着て鞄を手にした。
え、と呆気に取られる僕に彼女は困ったように笑う。

『ごめんね、チャック。知らない間に迷惑かけちゃってて…、もう来ないようにするから』
「え、ちょっと…エア?」
『そ、それじゃ…、さよなら、チャック』

ドアノブに手を伸ばしたエアに向かって慌てて声をかけるよりも早く、なぜかダイブしていた。
きゃ!と聞こえた短い悲鳴と共にドシン!と倒れる音が部屋中に響く。

『お、重いよ、チャック…!』
「ご、ごめん、エア!だ、大丈夫?」

気づけば僕がエアを押し倒している格好で、顔を真っ赤にする僕たち。

「い、嫌じゃないんだ、ただ…その、ぼ、僕も男なんだ。だから…」
『……こ、興奮、しちゃう?』

目を見開く僕に、エアは小さく笑った。

『……あのね、ずっとチャックのことが好きだったの。だから、わざと着替えたりとか、して』
「あ、え…」
『チャック、私のこと…嫌い…?』

バクバクと高鳴る心臓。
それを隠すように手を伸ばして涙が溢れるエアの頬を撫でる。

「嫌いだよ」

目を見開く彼女に僕はニヤリと笑った。

「嘘、好きだよ。僕もずっとエアのことが好きだったんだ」

見つめ合う僕たちが、僕待望のキスをしようとした瞬間。

「よう!チャックにエア!調子はど…」
「……」
『……』
「……お邪魔さま!」

状況を判断して素早く消えたモーガンと妙な沈黙が流れる僕たち。
2人で笑いながら抱きしめ合った。






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