『おはよう、ブラント』
フワリとした優しい声。 重たい瞼を開くと、二日酔いに苦しむ俺を見て苦笑するエアの顔が朝日と共に視界いっぱいに広がった。 小さく呻きながら寝ていたソファから体を起こす。
『また朝まで飲んでたって聞いたけど…、大丈夫?』 「……あぁ、平気だ」 『水、飲む?』
差し出された水を遠慮なく受け取って一気に喉に流し込む。 俺の隣に座ったエアがまた苦笑した。 コップを置いて早急に彼女の後頭部に手を回してゆっくりと顔を近づけるが、エアは慌てて俺の顔を近くに置いてあったクッションで塞いだ。 おかげでレザー生地使用のクッションとキスをするハメになる。
「……何すんだ」 『い、いきなり何するの』 「何って…、おはようのキスだろ?」 『……しなきゃダメ?』 「可愛い顔でそんなこと言われたらしたくてたまらないんだが」
しばらくしてエアが恐る恐るクッションを下ろすと同時に飲みかけのままだったウイスキーを口に含み、そしてそのまま彼女の唇を塞いだ。
『ん、んー!』
アルコールが苦手なエアはすぐにジタバタと暴れ出すが、生憎逃がすつもりはない。 しっかりと抱きしめたままソファに押し倒し、舌とウイスキーを彼女の小さな口に入れる。 飲み込めなかったウイスキーがエアの口から溢れて口元を伝い落ち、舌と舌が絡み合う音がいつもよりも響いた。
『…っ、ぷぁ!はっ』
じゅ、と彼女の舌を吸ってから離れると、ウイスキーの色が混じった糸が俺とエアを繋ぐ。 苦しそうに目を瞑って喉元に手を添えるエアの口元を舐め上げた。
「……大丈夫か?」
ゲホッ、ゲホッ、と、ただ咳をするだけのエアに少し慌てて抱き起こし、ゆっくりと背中を摩る。
『ブ、ブラントの、バカ…!』 「悪い、少し乱暴過ぎたな」
涙目で俺を見上げるエアに不覚にも胸が高鳴る。
「水があるぞ、飲むだろ?」
ミネラルウォーターが入ったペットボトルを手にすると、ふいにシャツを引っ張られた。 振り返った先にいるエアの潤んだ瞳と唇、赤に染まる頬と押し倒したせいでシャツの間から覗く胸の谷間に視線が向かう。
「お前…、ホントに酒はダメなんだな」 『ブラ、ント…』 「……何だ?」 『……さっきので、水、飲みたい…』
思わず、ニヤリと口角を上げてしまった。 それから俺はミネラルウォーターを口に含み、そしてエアの唇をまた塞いだ。 ウイスキーを飲ませたときのよりも、荒々しく、熱く。
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