※微グロ注意





腹が熱い。熱いと言うのは決して火傷をしたとかそういう訳ではなく、ある種の例えである。
腹を刺された。
誰にって?
見るからにイカれたやつに。
平衡感覚を失った身体がふらりと傾いた。すぐ真上で電車が走る音がする。壁にもたれ掛かっていた俺は立ち続けることすら困難になり、ずるずるとその場に座りこんだ。背中と尻にコンクリートの冷たさを感じる。腹が熱い分、気持ちがいい。
逃げて逃げて逃げまくって、やっと見つけた安心できる場所。息を吐き出すと肩にのし掛かっていた重たい何かがすとんと下りた。
額に玉のような脂汗が浮かぶ。けれども拭う余裕はない。右手は傷口を押さえるのに必要だし左手はいつ襲われても対抗できるようナイフを持っていなくてはならない。
たらりと額から口元に汗が滑り落ちてきた。それをぺろりと舐めとると、苦いようなしょっぱいような気持ちの悪い味がした。
目を開けて空を見た。
薄気味悪い曇り空だった。それに五線譜のような電線が加わって益々気味悪い。いっそ雨が降ってくれればいい。そして血も汗も洗い流してくれればいい。
息はなかなか整わない。こんなにも痛い。こんなにも苦しい。ふと、俺はなんでこんなことをしてるんだろうと考えた。
 俺も高校行ってた頃までは真面目に勉強してそれなりにいい成績を残してたはずだ。なのになんで俺はイカれた奴に殺されかけて身を守るように一本の小さなナイフに縋ってるんだ。いつから俺は道を踏み外したんだ。
頭がくらくらする。だんだんと視界が黒に侵食されていく。俺は死ぬのだろうか。否、死なない。死んでたまるか。
寝転がると全身にコンクリートの冷たさを感じられた。ひんやりとした感覚が身体中の熱を奪い、楽になる。
なんて優しい冷たさなんだろう。このひび割れたコンクリートは母さんよりも優しい。あぁ、そうか。俺はきっとコンクリートから生まれたんだ。そうだ。きっとそうだ。だからこんなにもコンクリートが優しいんだ。
なんだか眠くなってきた。全部コンクリートが優しいせいだ。このまま眠ってしまおうかと思う。そうして俺は冷たい母胎にかえっていくんだ。あぁ眠いよ母さん。手からナイフがころりと落ちた。傷口を押さえる手も力を失ってきた。
俺はしばらく寝るよ。そうしてコンクリートのヒビを血塗れの指でなぞってみた。そして俺は…。




コンクリートボーイ




20100911

素材:comeko



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