それは夏休みの花壇、日課の水やりをしていた時だった。

そいつは俺の目の前に現れた。


ドサッ


「!?」

「いてて…くそ、登場の仕方失敗した…華麗に天から舞い降りてくる予定が…」

「は、誰…」

「ややや!これはこれは幸村殿ではありませんか!」


わざとらしい驚き方にイラッとしたし演技かかった口調にど突きたくなったけどなんとか心中に納め、俺は人当たりの良い笑顔を心がけてそいつに話しかけた。


「うん、誰かな?」

「花の妖精です」

「え?」

「は、花の妖精です…」


自称、花の妖精は怯えた様子を見せた。
俺そんな怖い顔してたかなぁ。


「ふざけてるのかな」

「いえ!滅相もありません!わたくし毎日水やりをしてくださる幸村さんに感謝の気持ちを伝えに参りました!」

「へえ…」

「ゆ、幸村さん!願いごとを3つ叶えます…よ?」


花の妖精(笑)はその勢いをどんどん落として完全に落ち込んでしまった。
…少し可哀想だったかな?花のコスプレまでして会いに来てくれたのに。


「ねえ」

「はい…」

「名前は?」

「なまえと申します…」

「よし、じゃあ最初のお願いね」

「!」


俺が信じたと思ったのか、顔が輝きだした。
なんだ、単純で案外可愛いじゃないか。


「なんなりと!」

「マネージャーになってよ」

「マネージャー、とは?」

「俺達テニス部をサポートしてよ」

「が、頑張ります!」


かくして花の妖精(笑)なまえのマネージャー奮闘生活が始まるのであった。


「残りの二つはどうしましょう?」

「保留で」

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