▼君への愛が迷子らしい



リュウジはヘタレだって晴矢が昔言ってて、風介も頷いてた。
それは違う、と今の僕は思っている。ヘタレなのは俺の方なんだ、って言えすらしない。それに俺、そんなリュウジに、一歩も進めてない。

「ごちそうさま、もう、お腹一杯だ」
「ヒロトは少食だなぁ」
「なんでそんなに食べても動けるのか、俺には不思議だよ」
だって体持たないじゃん、ってニコニコ笑う顔とか、まだ食べるらしい彼のもぐもぐ動く頬っぺたが、たまらなく愛しい。
そう愛しい。とっくに知ってた感情だってことも、とっくに自覚してる。
「…食い過ぎないようにね」
「ヒロトさんってば、リュウジの兄ちゃんみたい」
聞こえてないのかなんなのか、がっつく緑川。の、隣で笑う木暮くんの言葉に、「ええ…兄ちゃんじゃなくてかッ」慌てて自分の口を塞ぐ。
喉が、胸の奥がキシキシ音を立てる。
俺は口を手で覆ったまま、マネージャーたちにご馳走さまと言って食堂を出た。
そして自室の鍵をしめた。するりと出かけた言葉は透明のまま、戸にズルズル寄りかかって息を吐く。

(お兄ちゃんじゃなくて、何が良いって言いかけたんだ俺)

なにこれ、胸が苦しい。


(どこにいきたいんだ俺は)








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