3日経っても柳生くんは学校へ来なかった。でも今日は柳生くんのことを考える時間があまりなかった。月に1度くらいでやってくる、目まぐるしい日、そう日直だったのだ。学級日誌に「今日は全体的に挙手の数が少なかったのでもっと積極的に手を挙げましょう」なんて当たり障りのないことを記入した。そんなの柳生くんがおやすみしたからなんだけど。日誌をぱたりと閉じ、時計を見る。17時02分。今日は柳生くんが轢かれたあの道から帰ろうと不謹慎極まりないことを考えながら職員室へ向かう。

「先生、終わりました」「ごくろうさん名字」「さようならー」「ちょっと待て、お前、柳生にこれ届けてくれないか」「えー」これと手渡されたものは今朝配られた授業参観のお知らせと来月の親子レクの参加の是非を問うプリントだった。「レクがバス旅行だろ。それで早めに出欠確認して予約しちゃいたいそうだから」それじゃあよろしく、と一緒に渡された紙切れはプリントアウトされたグーグルさんの地図で、なるほどわたしの家と遠からず近からずの位置に柳生くんのお家はあった。


ピン、ポーンなんていう我が家のインターホンとは違って柳生くんのお家はなんだかお上品な感じがした。「立海大附属中学校の名字と申します、柳生くんに」「すぐ行きます」言い終わるのを待たずに柳生くんは自ら玄関へと赴きわたしを迎え入れてくれた。しかし手には松葉杖。「プリント持ってきただけだからここで」「いえ、折角ですから上がってください」この人、何処までも紳士的である!がしかしね!「怪我人の柳生くんにおもてなしされるわけには」プリントをはやく渡して帰ろうと、鞄を開く。でも次の言葉でわたしはおもてなしされることを決めた。

「あなたには私の秘密について、お話しなければいけないことがあるのです」




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